第一話 スキルって何?

 奴らが来るまでそう時間は掛からなかった。 ゾンビや骸骨を引き連れてやってきた。 




 まだ俺が残っているのを見て驚いている感じだった。




「逃げないとは随分と生意気ですねぇ。 腹が立ちますよ。 先ほどの無礼、 いやぁ。 危うく逃げ帰りそうでしたよ。 あのまま帰っていたら大目玉です。 よくまあ。 あんな卑怯な手を使えますね。 ちびりそうになりましたよ。 本当に……」








 奴らにも上司のような存在がいるのか初めて知った。 離れていても顔面が紅潮していたのがわかる。 相当、 怒っているようだ。 








「逃げていると思ったらわざわざ出てきてくれるなんて今日はなんて良い日なんでしょうか。 汚名返上できます」




「こっちこそ好都合だぜ。 来てくれるなんてな」




「その態度不遜ですよ? 覚悟しなさい。 全員この男を貪りなさい! 骨も残さなくてもいいです!」








 ゾンビがうなり声を上げた。 どうやったるのか知らないが骸骨たちも笑っていた。




誰もいない墓場に死霊どもの笑い声が木霊する。




 俺は剣を構えると距離を詰めた。 近くにいた骸骨が剣を振り上げた。 俺はその剣を躱すと蹴りを繰り出す。 蹴られた骸骨は吹っ飛んでいった。 あの感じだと再起は不能だろう。




 次から次へと斬りかかってくる骸骨の攻撃を躱していく。 すると先ほどまで居丈高に支持をしていたネクロマンサーが黙った。




 不味いと思ったのか、 俺を包囲するように囲むように指示を出す。 どうやら俺の実力を侮っていたようだ。 




 骸骨とゾンビたちはじりじりと包囲を狭めてくる。




 俺の死角から骸骨が一体飛びかかってきたが、 俺を一刀のもとに切り伏せた。




 痺れを切らしたのか次から次へと斬りかかってくるが、 全て躱した。 そして隙だらけの相手に剣を浴びせる。 斬られた骸骨達は首を飛ばされ、 倒れた。








「ガアアアアアア」 








 骸骨たちが雄たけびを上げた。 相当苛立っているようだ。




 無理もない。 まったく相手になってない。 率いていたネクロマンサーが驚愕の表情を浮かべる。




 俺自身は自分のやっていることが信じられないでいた。




 これが魔闘のスキルなのか、 初めての戦いなのに恐怖心は一切なかった。




 こういう時はどうすればいいのかすべてわかっている感じだった。 考えるよりも先に手が出ていた。




 勝てる。 こんなやつら雑魚だ。 大したことない。 相手が動くたびに、 損害が出ていった。 結局、 骸骨たちはみな粉砕されてしまい残るのはゾンビたちだけとなった。 








「ひ、 退きます。 総員撤退です」








 敵わないと思ったのかネクロマンサーが撤退していった。




 数が少ないゾンビたちでは相手にならないと悟ったようだ。




 俺は追撃しようか悩んだが、 結局追撃をやめた。 ネクロマンサー達がいなくなると墓場に再び静寂が訪れた。








「追撃を止めたんですか」








 クロネは非難するような視線を向けてきた。




「あれ以上追っても意味ないだろ」




「殲滅すれば敵はもう来ないかもしれませんよ」




 俺は無言で撤退を見送った。 クロネの言う通りここで殲滅すれば次からは来ないかもしれない。 自分でもわからないまま。 ただ、 呆然と突っ立ったままだった。

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