第参拾伍話

とある日。

朝、身支度を整えるためにドライヤーをかけていると、誰かの話し声が聞こえた気がした。

もちろんテレビではない。

ドライヤーを止めてみるが、何も聞こえない。

その時は、気のせいかと思い、特に何も思わなかった。


別の日。

一人でお笑い番組を見ながら笑っていた。

「やっぱこの二人好きだわ」と独り言を言うと、後ろから「うん」と返事が返ったきた。

思わず振り向くが、誰もいるはずもなく、気持ち悪さだけが残った。


また別の日。

仕事が遅くなり、いつもより遅い時間の帰宅となった。

鍵を開け、真っ暗な玄関に灯りをつける。

「ただいま」

昔からの癖で、一人暮らしなのに声に出して言ってしまう。

すると、暗闇の奥から

「おかえり……」

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