第19話 

 東龍が俺の傍でため息を混じりに「ああなると、小一時間はかかるんだ」と言うので、俺は玄関から少し離れた縁側に座った。


 ボロ屋はある意味。俺には機能的のようにも見えた。一階建てで質素な台所と客間、こじんまりしたお座敷も一際広大な書斎も。殊の外シンプルだった。箪笥やちゃぶ台。生活に必要不可欠なものしかない。そんな感じだ。


 夜は灯りは外から漏れ出てきているので、足元が覚束なくなることもないし、何よりそんなに暗くならない。薄暗いだけの人が住むには申し分ない造りだった。


「へえー、そりゃあ当然ね。これなら龍も楽に斬れるわー」

「ふむふむ。えーっと、この刀はいつ頃に造られたのかしら?」

「やっぱ、私は天才だね! おおよそ……かな? うーん……違うわ。もっと昔かしら?」

「どんな鉄を鍛えれば、こんな刀が……。あ、そうか? 確か違う星へ家族で旅行へ行った時に興味が湧いた鉄や土があったっけ? そうだわ。その鉄とか……じゃない?」


 かれこれ一時間後、独り言から戻ったリンエインから、やっと刀が返ってきた。


「あれだけ斬って刃こぼれもしない……しかも……」

「はあ……」

「だろ」

 俺はもともと疲れていたので倒れそうになり、東龍はあれだけ戦ったのにケロリとしていた。

 リンエインは美しいが妙に独り言が多い女性だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る