第18話
けれども、その場で。一人の美しい女性が近づいてきました。あのリンエインです。チャイナドレス姿の分厚いメガネを掛けた緑の長髪の人ですが、立派に戦略会議の主役をしている者です。
空はもう鱗で覆いつくされています。
行き交う人々の顔には、恐怖の色しかありません。
リンエインはその分厚いメガネで俺をじろじろと無遠慮に見てから、こう告げた。
「ちょっと、すぐにこっちへ来て」
「へ?」
「いいから! ねえ、ちょっとだけ!」
海へと行く道とは反対方向の路地裏にある一軒のボロ屋に武は連れられました。リンエインは武をボロ屋の中へ招き入れ、ここが自分の家だと言いましたが、私も見たのは初めてですが、なんとも……。
「ねえ、あなたのさっきの技。心気で龍を斬るようよ。つまりは気持ちね」
「……?」
「空を埋め尽くす龍と戦うのであれば、きっと、こう思えばいいんだわ。必ず何でも斬れるんだって」
リンエインは俺の鞘に収まっている雨の村雲の剣を見つめ。
「少し刀身を見てみたいんだけど……」
その時、四海竜王と鬼姫もこちらへ走って来ました。
玄関先で鬼姫はリンエインを真剣に見ています。
「ふふっ、武よ。ここでもモテモテだな。そいつの父親はここ竜宮城の城下町随一の天才軍師で、娘のリンエインも父親と同じく才覚を認められ、魚人を統べる軍師をしていた頃もあるのさ」
東龍の一声で武と鬼姫の顔や雰囲気が引き締まりました。
そうです。
四海竜王にとっては戦の方向をあっという間に決めてしまう存在なのです。
「天才軍師……この人が……? 心気?」
「そういうこと。ちょっとこれ借りるわね」
リンエインは雨の村雲の剣を武の腰から鞘ごとするりと抜き取りだすと、丁寧に刀を抜きました。そして、刀身に一礼して、しばらく眺めます……。
そして、
「わ、凄い! 神話クラスの切れ味だわ!」
などと独り言を延々と言いだしました。
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