第14話

 ここは水の惑星。


 竜宮城から西側の海域の戦場です。

 四海竜王も血を流し苦戦をしているようです。

 水淼の血龍は刃や刺突物で覆われた細長い身体を使い。近づくものを次々と切り裂いてきます。南龍は重症です。巨体が裏目にでていました。竜宮城へと引き返すようこちらから言いたのですが、いかんせん私の存在は影武者や一部のものくらいしか知りません。

 西龍は八つある首が三本切り落とされています。

 もう見ていられません。

 おや? 私がそう思うと同時に。


「見えた!!」


 抜刀した武がタケルになり海を疾風のごとき速さで走りながら叫びました。瞬間、上段から超絶とした細長さの水淼の血龍の頭から尾までを一振りで真っ二つにしました。

 

 水淼の血龍は大きな水しぶきとともに、その長き身体を海に沈めました。

 

 幻の剣 二の太刀 蕪割り。

 

 お蔭でこちらは助かりましたが、これもなんとも恐ろしい技ですね。

 おや、東龍も重症のようです。

 龍の姿から人の姿へと戻ると、満身創痍でした。そのまま海面で浮かんでいましたが、徐々に水底へと沈みそうでした。武が歩いて近づいてきましたね。

 武は東龍の手を取り、ずっしりとした東龍を背負いました。

 この星で、私は二人のただならぬ友情を感じました。


 ここは竜宮城 竜王の間です。

 四海竜王と武は、今後の事を皆に相談しています。

 魚の頭の魚人の長老は何度も頷いています。

「ほお、ほお、……幻の剣といいますか。それは……恐ろしい。それを知っているものたちを早くにこちらへと……じゃが、無理でしょうや。ここ本星が地球という星に接近しすぎると、地球は水海と化します故。それでは、きゃつらと闘うどころではないでしょうやなあ」


 ここから見ても、武はしばらく真剣に考えているようです。

 こんな時に高取さんがいればいいのでしょうが……。

 恐らく武も同じ思いなのでしょう。


「うーんと、では、ある程度の距離で地球へ接近すれば……」

 魚人の長老は即座に首を振り、

「そのある程度がわしらには、ようわからんのじゃ。近すぎか。遠すぎか。それはそれは乙姫様でも微妙なところじゃ。まず無理でしょうや。今のわしの考えでは月と同じ距離ならと思っておりました」

「月? それなら……いいかな」

「だが、それでも近すぎなのは変わらないはずじゃ。地球が水浸しではうまくいかないじゃろうな」

 武の隣に立つ北龍が具申した。

「それなら、姫様が昔遊んでいた時にしていた。渦潮と地球の渦潮を同じ時間に発生させるのはどうでしょう?」

「?」

 北龍の言ったことが武にはさっぱりわからなかったようです。無理もありません。その遊びは大昔、私と影武者が遠い星々でまれにしていたことでした。簡単にいうと、渦潮と向こうにある渦潮の時間を同じにして移動してしまうのです。


 例えば、ここでは昼の14時14分14秒を指した頃。そして、向こうでも14時14分14秒を指した頃に、一秒も誤差のないように渦潮を同時に発生させるという移動方法です。

 そう、昔々二人で遊んでいた時には、向こうとここの時間がまったく変わらなかったのです。

 ですが、遊びでやったその方法は、今となってはかなり難しい技術だったようです。


 そして、少しでも誤差が生じると大変なことに……。

 今まで黙っていた影武者が口を開き決断をしました。


「それは懐かしいですね。承知しました。やりましょう」

 

 私よりも影武者の方が昔と違いました。

 影武者も変わってしまったのですね。

 それでは、そうしましょう。

 私も変わらなければなりません。




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