第11話 薄屋のミンリン
女性は名をミンリンといいます。
薄屋の看板娘です。
昔、一目見ていまして、ミンリンはとりわけて美しい19歳くらいの容姿の若い女性で、淡い水色の中国衣装の漢服(別名ハンフーともいいますね)が印象的な気立ての良い人だったと覚えていますね。
確か東龍の恋人候補の一人だったようにも思います。
空はもう真っ暗ですが。光源は月が三つもあります。数多の提灯が浮かび行き交う人々で賑わう夜道を、東龍と武とミンリンは薄屋へと歩きました。
一方。
ここは竜宮城のある大陸から北へと数千キロの一軍が全滅をしたところです。
暗黒が支配した暗き海に、大量の赤黒さを含んだ海水が波打っています。
一体……?
ここで、何が起きたのでしょう?
おや? 薄々わかってきました。
あの、龍の仕業ですね……。
ここから見えました。
全身を棘や刃のような刺突物の赤い骨格で覆われた。天まで届きそうな非常に細長き龍です。名を水淼の血龍とでも言いましょうか。昼間はどうやら単に海の中に入っていて見えなかったのでしょう。
この龍も水を呑みほす龍の一つのようです。
全身尖った骨のようなものがむき出した龍。水淼の血龍。恐らく魚人の一軍が全滅したのは、歯が立たなかったからではなくて、攻撃する箇所がなかったせいでしょう。それくらに細く。まるで、針や糸のような体格なのです。
これではあの長さで襲ってきたら、一溜りもありません。
皆、尖った刺突物でやられたのでしょう。
なので、私は水淼の血龍と名付けました。
この龍には弓もモリも効きません。
武はどう戦うのでしょうか?
武が心配です。さすがに、もう竜宮城へと戻らないとけいません。
ここは竜宮城の城下町。
案の定。東龍は薄屋の一角で武に酒を勧めていました。
「武よ。酒は美味いぞ! 騙されたと思って飲んでみろ」
「いや、俺は……」
武は困って、隣の席の南龍を見ました。
南龍は黙々と食べています。豚の頭。饅頭。ワンタンと白身魚のスープ。坦坦麺。原酒を二升。焼酎。豚足とニラの炒め物など、一気に平らげてしまう。
南龍は少年の姿なのですが、元は齢1万年の巨大な龍なのです。
小食の武は南龍に終始たじたじになっていますが、ですが、武はそんな南龍に好意的に微笑んでいました。
喧騒の激しい店内では、魚人たちも食べ物にありついています。ここ薄屋は皆にとりわけ好まれているのですね。老舗だけあって、客と客席は十分です。
武は団子と饅頭とお茶を食しています。
もっぱら、いつものことで何かに集中しながら食べていました。
ここでも何かの修練をしているかのようです。
おや? ミンリンが武の席に来ました。
東龍はミンリンのお尻を触り、叩かれています。
「あんたねー! いつもいつも!」
ミンリンはとても怒っていますが、何やら照れてもいます。おや、武の顔を密かに盗み見ています。
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