第10話
綺麗に弧を描いた刀の切っ先は、正面の海面にズン。と不気味な音と共に見事海水を水平線まで斬りました。まるで、海を刀で斬る技のようです。
海面は瞬時に膨張するかのように両側から海水が天へと断末魔のような噴出をしていきます。武は見事大海のど真ん中に巨大な穴を開けました。これが恐ろしいですが幻の剣なのですね。はて? 鬼姫の龍尾返しとはどこかが違います。きっと、独自に武が産み出したのでしょうか?
ああ、そうですね。まだ未完成だったからです。
不気味な体長30メートルの海蛇や巨大なタコ。七色の美しい魚までもが天へと噴出する海水と共に登りました。
それと同時に瞬く間に水淼の大龍の姿が消えました。
勿論、遥か遥か下方へとです。
ここ地球とは違い水の惑星の海には底というものはありません。
奈落の底へと落ちた水淼の大龍はどうなったのかはわかりませんが、恐らく底にはまだ並々ならぬ海水があるでしょう。そうです無傷なのです。
「おおー! これが新しい武の技か! 強くなったな。武よ」
東龍は大穴の空いた大海をしばらく眺めました。空の上には美しい七色の魚群や、スカイブルーのクラゲ、金色のエビなどが舞っています。それと同時に豪雨が海に降り注ぎました。
「はあ、疲れた……」
「武。お前強いな。一万年くらい生きていたがお前みたいな奴は見たこともない。お前のおかげで地球に住んでみたいと初めて思ったぜ! なあ、後で城下町の薄谷に行こうぜ。そこには酒と団子があって、かなり美味いんだ。そうだ南龍も誘おう。小さい身体だけど大食いだぞ。俺と同じくその店の常連でさ」
武は東龍に連れられ、竜宮城の城下町へと歩いて行きました。薄谷はおおよそ3千年前からある老舗です。私も昔はよく通いましたが。なにぶん、大昔なのでよく覚えておりません。それでも、とても懐かしい場所なのです。
武家屋敷やお店(おたな)などが目立つ。未だ賑わう城下町には、夜を迎える準備の提灯が町の魚人たちによって所々に掛けられていました。
「ああ……けど、俺は未成年だから……」
疲れで肩で息をしながら武は真面目な事をいいました。
ここでは年齢は関係ないようにも私は思います。
「未成年? なんだ? 酒が飲めない病気か?」
「いや、違うけど。まあ、団子とお茶を頂くよ」
東龍は武の肩を叩きました。
「ならいい。ほら、行こうぜ!」
武は東龍に連れられ、竜宮城の城下町へと歩いて行きました。東龍には友人が多いこの町で、一人の女性が武を迎えました。
数多の提灯は幻想的な灯りで三人を照らしています。
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