第4話 水淼の神々
10月21日 午前11時30分。
「それで結果は惨敗でしたか……」
「ええ。鬼姫さん。だから……また稽古をお願いします」
ここは地球。
存在しないはずの神社です。
日本中から巫女が足を運ぶ社。
武はそこにいました。
鬼姫との朱色の間での会話です。外には、生い茂る葉。川のせせらぎ。風の音に応える木々の揺らぎがあります。
そこに武と鬼姫は顔を合わせて座っています。
当然、二人は深刻な顔です。
何か鬼姫には策があるのでしょうか?
早く、早く……武よ……。
「将を射んとする者はまず馬を射よ。です。武様」
「え?」
廊下では蓮姫と地姫がこちらを、いえ、私の方を見つめています。
「幻の技があります。幻の剣(げんのけん)というのですが。その中で龍尾返しという技があります。それを今日から教えますね。武様。今日から泊まっていってくださいね」
チュンチュンと雀が鳴く空の下。
私は鬼姫が密かにエタリと笑んだのを見逃さなかったのです。
深夜。
武のいる朱色の間まで、息を殺して鬼姫が音もなく歩いていました。皆、鳥も人も陽も寝静まった夜です。青々と茂る森林からもフクロウの鳴き声が微かに聞こえるくらいです。
鬼姫は、武のいる部屋へスッと入ると、素早く布団に潜りこみました。
持参の枕と共に……。
でも、これからの武の想像を絶する厳しい稽古の前には、私には丁度いい微笑ましい光景にも映りました。
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