第1話 

 日本海域

 巡視船内 浮遊丸 午前5時0分


「このところ雨が止むことがないなー」

「そうでありますか?」

「半年前みたいに世界規模だってさ」

「……」

「ありゃ、大変だったが……またとはなー」


 戸豪 正は、部下の国助 実の顔を見ても仕方がないので、何か注意を引くものはないかと、考えあぐねているそばから真っ暗な船室で、レーダーにも肉眼にも映る大量の渦潮を発見した。


「なんだか、前と同じですねー」

 国助の震える唇から出た言葉だった。

「ああ、半年前……。確か竜宮城が攻めて来たっていう! おとぎ話から飛び込んできたような話のあれか?!」

 険しい顔で戸豪は前方を睨んだ。

 渦潮は更に数を増やした。

 轟々と雨風の鳴る暗き海だった。

 普段なら、雨風も気にしないのだが、戸豪は半年前のこともあって、かなり神経を使わざるを得なかった。

  

「大騒ぎになったが、ありゃー、さすがに俺でももう死ぬかと思ったな」

「ええ。そうであります」

「なんでも、日本のどこかの神社が退治したって?」

「はあ……」


 巡視船は、渦潮から遠ざかろうと面舵を取った。

 戸豪はもはや危機的状況なのを認識していた。

 皆の噂が本当なら渦潮から龍がでる。

 

 そう思ったようですが……。

 そこからでたのは……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る