第85話


『……考えれば考える程、今回の探索で一番の当たりだったかも知れないなぁ……』

「流石にそれは“言い過ぎ”じゃない? エンが何を考えてそう思ったのかは分からないけれど、ほら、共鳴結晶の方が私達にとって価値が高いと言えるんじゃないかしら?」

『あー……、まぁ、確かにそれはそうかも知れない。魔道具に加工しなきゃならない手間も費用も大き過ぎて、マイナス評価になって、総評的に順位が落ちてたかもなぁ……』

「そうね。それは仕方のないことだわ。だけど持つこと自体が珍しいのだし良かったじゃない。クランとしてやっていくなら必要だったでしょ? 特に“ウチみたいなクランには”ね?」


 俺達のクランは特にそうだろう。そうでなくとも欲しがるクランは多いはずだ。あのただの水晶の塊が金貨数百枚の価値だなんてと、ギルドで査定結果を聞いた時にはそう思ったが、その特性を聞いていく内に値付けの理由は納得出来てしまった。


『いち早く導入したいなぁ……そうすれば有事の際に役立つのに』

「ねねね、あれってさー、結局、電話みたいに使えるってことでしょー?」

「ヨウちゃんそれは、いずれって話だよー。今の技術じゃトランシーバー止まりだねー」

「え、トランシーバーも電話ぢゃん? 形も似てるし。……え、違うの?」

「近いんやけど、ちょっとちゃうなぁ……簡単に言うたら常に会議通話しか出来ひんねん」

「だかラ、誰かを選んデ、会話は出来ないってことですよネ?」

「そなの!? えー! ぢぁあ、恋バナとか乙女の秘密の会話とか出来ないぢゃん! サイアクー」

「コッ、恋バナッ!? 何を期待しておったのだッ!? そもそも使い方自体が違うのである!」

「緊急連絡とか招集が主らしいねー。国や各施設、大手クランなんかが持ってるんだってさー」

「それ位知ってる! それに見たこともある! ……けど、アレって電話ぢゃなかったんだぁ……」


 そこまでがっかりすることもないだろうに。そう思わせる程にヨウは肩を落としていた。その様子を見たグインツは今一度共鳴結晶の特性を知るべきだと言い、そして特性を理解したうえで何が出来るかを共通認識とすべきだとも言って講義さながらに語り始めた。


 講義は、共鳴結晶とは同じ結晶から取れた欠片同士であれば離れていても共鳴し、同じ音を発する結晶である、というところからだった。


 そして分割すれば利便性が高まることに反して機密性が下がることの危険性も説いてくれた。誰が何処でいつ失うかなんて分からないし、スピーカー通話のようにしか会話できないから誰に聞かれているかも分からないらしい。


 だから誰に聞かれていても良い情報を発信することにしか使れないようだ。しばらく、そんなようなことをグインツは話していた。かと思えば、


「……つまり、そういうことである。だが、ヨウが言う使い方もできない訳では無い。現状そうしたければ結晶から欠片を一つだけ取る方法しかないのであるがー、そう言えば、どこぞの金持ちがー、その、フィ、フィアンセへと、そうしたと言う話もーあるので、……あるよ?」


 と、突然、訳の分からないことを言い出した。何故その話をしたのかは脈略からして察することは出来たのだが、あまりの突然の事態に何が起こったのかと一瞬、俺の理解が追い付かなかった。


「……え、それって二人だけの、秘密の電話ってこと? ……んんんッ? ッて、きゃー! めためたロマンチックぢゃんっ、それっ! ステキー! アタシもそうしてほしー!」


 それまでは饒舌に語っていた筈だったのに、急に歯切れ悪くしどろもどろになったかと思えば、まさかあのグインツが突然、ヨウに気をまわして見せたのだ。いつもなら一刀両断しているはずなのに急に何事かと思ってしまった。


 けれども、その甲斐あってまさに夢見る乙女状態のヨウはいつもの調子を取り戻した。だが、その代わりにいつも冷静沈着な筈のウィーツが、まだ口元へと運びきれていないジョッキを途中で傾けてしまっているのにも気付かず、テーブルの下に果実酒を注いでしまっている。


 そして糸目キャラは何処へやら、目を真ん丸に見開いて驚いたまま茫然と二人のその様子を見ていた。


 もはや濡れたズボンのことなどお構いないのだろう。隣にいたフーガさんに指摘されてもウィーツはズボンを二三、はたいただけですぐにまた視線をグインツの方へと戻していた。だが、この驚き様は何もウィーツだけでもなかった。


 聞き間違いかと思って皆の顔を見渡してみたが、ココは何も乗っかっていないスプーンを口に入れようとしていたし、レオンは酔いが回ったのかと己を疑っているようだったし、皆それぞれ反応は違えど、グインツとヨウを除いたパーティメンバーの全員が皆同じように驚いているようだった。


「むふふーっ、ココちゃんもそう思うーよねーっ?」

「……あ、……へ? ああッ! ハイ、ココも、えと、思いまス」


 ココも自分が質問されたと認識するまでに、それなりの時間を要すほどには戸惑っているようだ。それもこれもグインツの変わり様を見れば仕方ない。今までの女性に対する接し方からして到底出て来る行いだとは考えられないだろうからだ。


「お、おい、どないしてんグインツ。……覚醒でもしてもうたん……かいな?」


 もはやレオンは変わり果てたグインツに対して心配を寄せている。もしや恋だなんだとヨウが言っていたのに触発されたのか。もしやグインツが長々と特性を語り始めたのもこうする為に始めたのだろうか。もしやグインツはヨウのことを。などと、そんなことを邪推すればするほどに、俺の頭の中は余計に整理が付かなくなってしまっていた。


「ま、まあ、実はその、元々こういう質たちである。……今までは、その……な? ……まぁ、つまり、我が覚醒する為にも、その色々とな、成長せねばならぬと思い至ったのであるよ」


 グインツの心の内を聞いて見て、俺はその身の振り方を一変させた意味を理解し、そして腑に落としこむことが出来たような気がした。


 言った言葉の意味はどうあれ、そのまま捉えることにしよう。素直に解釈するのであれば、自らを知り、自らの行いを見直したと言うことだ。


「恥ずかしがることはないわ。素直でいいじゃない? その方が“グインツらしい”わよ」


 流石はカノン。まさに言い得て妙だと思わせてくれる。これまでのグインツは恋愛や女性に関係すること以外は、常に周囲の目を気にする事なくやりたいと思うがままに突っ走ってきたはずだ。


 そう考えれば今までが不自然で可笑しかったとさえ言える。苦手意識がそうさせていたのか、恋愛や女性に対しては素直になれずにいたのだろう。


 奥手と言うか隔たりがあると言えばいいか、敢えてぶっきら棒に振舞って見せていたのもそのせいか。なんにせよ、グインツは今まさに変わろうとしているその途中なのだろう。



『ごめん。実際、驚いちゃったけど……グインツは凄いね』

「恐らく二度目であるからな。尽きぬ程の後悔もしたことであろうと思い至ったのである」

「え……まじなのコレ? あのグインツが、夢じゃないんだよねー? 【リプッ、んぐんんん!」

「ウィーツ殿それはなりません。今一時だけでも我慢してくだされ……」


 ほんの少しの事なのかも知れない。だけど、その変化は成長と言えるものだった。だがしかし、ウィーツは、そんな成長を素直に喜べないようだ。まるでお気に入りの玩具が一つ壊れてしまったというように嘆いていた。


『……まっ、とにかく、その内に俺達のクランにも通信連絡網が備わるってことだよね』

「で、あるな。だがしかし、加工に日数を要するのである。それにグループ単位で配ったとしても、行き届くまでにはー半年かそこらかは掛かるだろうな。それに費用も馬鹿にならぬよ」

『まぁ、とりあえずは俺達の分とログの酒場に一つあれば……ってとこだね』

「うむ。それであれば試験に合格して、遠征に行くまでの間にも整うであろう」


 実際の予定は分からない。だけれども長期遠征になることは間違いない。だからこそ、せめて一日一日、その日の最初と最後には心休まる一時があっても良いだろうと考えてのことだ。


 そして本当にどうしようもない時、何か一言でも残せるようにとそう皆で決め、幾らかかろうとも何れは必要になるのだし、先行投資として資金を出し合うことになった。


「でも、数作るとなると概算でも結構な値段しとったし、また頑張って稼がなあかんよなぁ」

「そうね。60階層以降に必要な防寒装備は取り急ぎ揃えられたけど、それ以降の基本装備とか道具類の拡充とかも考えるとまだまだ“余裕がある”とは言えないものね」

『うん、流石に装備をケチれなくなって来たしねー……あ、試験ではそれら含めて全部が全部選考基準になり得るんだっけ? なら、じゃあー試験合格しても落ち着いていられないなぁー……』

「その辺は任せてーっ、ギィ軍団達がいれば、ちょちょいのちょちょちょーだし!」

「いや、めちゃくちゃ助かってるけど、ちょちょちょーってほど簡単では無いやろ……」


 確かにヨウが覚醒したお陰で一日に稼げる金額が大幅にベースアップしている。だから数か月あればかなり良い装備を整えられるようにはなる筈だろう。


 だが、もう狩りに出ていられる日が無い。試験は明後日、それに合格しても後一か月の有余があるかどうか、というところだ。


 試験にはこのままの状態で臨むしかない。そして合格しても更に役割の昇格を目指すのであれば遠征前の有余を如何に使うかが重要になって来る筈だ。


 僅か一か月でどれほどの成長を遂げたかということさえも判断材料となり、ゆくゆく就ける役割が違ってくると聞いた。


「もうちょっとザコからのドロップ率が高かったら期待もてるんやけどなぁー……」

『あぁ、それは確かに。ゲームとは違ってアイテムがポロポロ落ちないもんねー』

「うむ。落ちたとて価値は知れておるしな。一攫千金とはならぬのであるよ」

『まぁ地道に稼ぐのもそれはそれで楽しいんだけどねー……』

「せやなぁ。やっぱ一攫千金を狙うなら宝箱探すしかないわなぁ」

「“簡単には”見付からないわよ。今回見つかっただけでも運が良かったのよ?」

「確かになぁ……あ、せやっ。あの呪われてそうな見た目のダガーはどないするん?」


 レオンは思い出したように宝箱から得たダガーの話を持ち出した。その問いの意味としては売るか使うかの二択を聞いているはずだ。そして、もし使わなければ装備に充てる資金が増えると考えて質問したのだろう。


『……あー、俺が持ちたいなぁーって思ってるんだけど……ダメ?』

「なるほどな、腰のナイフの代わりにか。まー、ええんちゃう?」

『うん、皆もそれでいいかな? ……なら、有難く使わせてもらうね?』

「でも、研いどった方がええかもな。元の素材が分からんほど黒ずんどるし」

『あ、もう呪われてないって証明されたし、使い方含めて見てみてよ』

「お、そうやな。ほな、貸してみぃー、ほれほれー」


 宝箱から取り出した時は如何にも呪われていそうだとレオンは気味悪がって手に持つことを拒否していた。だが、ギルドで呪われていないことが証明されたことによってその抵抗は無くなったようだ。


 今は楽しみだというように手招きしながら催促していた。俺はレオンに急かされながらも、ポーチから布で包まれた状態のダガーを取り出し、そして静かに手渡した。


「うぃ、ほー意外にズッシリしとんな」


 レオンは受け取ったダガーを掌の上で転がし、眺め、そして感想を述べた。だが、その感想はただの見立てのみの印象でしかない。


 いかに武具類に精通したレオンであろうとも、まだユニークアビリティを発動させていない状態で分かることは少ないはず。だから俺はその時を固唾を飲んで見守ることにした。


「……【理想アイディール体現者エンバディメント】」


 如何な評価が下るのか。そう心待ちにしていると、レオンは静かに呟きながらユニークアビリティを発動させた。そして間もなく身体から発せられた黄金の魔力がダガーを包みこんだ。


「……素材はー……おいっこれッ! 単なるダガーやないッ、鍵やでッ!?」

『――えっ!? カギ? それって、もしかして……キーってこと?』

「せや! 鍵型の魔道具なんやコレ! ちょ、そこ仕切り引いてくれっ」

『あ、うん、……ってことは、ダガーとしては使えないの?』

「いや、使おう思たら使える、けど……いや、先に見せるわ」


 言って聞かせるよりは見せた方が早いと言うことだろう。俺はそれ以上の質問をするよりも前に、まずは指示されるがままに後ろの仕切りを伸ばし、人目を避けるようにした。そして念のためにカノンへは遮断するようにとの合図を出しておいた。


『カノンありがと。レオンお待たせ。これでいいかな?』

「おう、サンキュー。……ほな、使ってみるで」


 そう言うとレオンはテーブルから離れた位置、そこには何もない床の上へと移動した。そして両膝をつき、ダガーを握りしめると一息に床へと突き立てた。


『床ッ!? ログさんに怒られ――』

「――安心せい。後は残らん。……ほれ、見てみぃ……」

『な、えっ、魔法陣?! んん? これって、ゲー……ト?』

「いや、……これは、ただの扉、であるよ」


 グインツがそう言うように、レオンの足元には地下へと繋がって居そうな真っ黒な扉が現れていた。


『……なん、コレ?! どこから、出て来たんだ……』


 確かレオンはダガーを床に突き立てた後、本当に鍵を回すように手首を返していた筈だ。


 それから黒い魔力が滲むように広がったかと思えば、魔法陣のような図が出来上がり、そして水中から水面へと浮き上がって来るかのように自然と扉が現れていた。


「興味深い。……で、レオンよ。取っ手に手を掛けておるが、そこを行くのか?」

「え、まぢ? ……ちょっと気味が悪いんだけど、だいじぶなの?」

「ここ、二階だけど、……“下は”どうなっているのかしら?」

「……わぁ、……おねぇちゃん、これ、凄いね」

「……勝手について行かないでね。お願いよ。ソナ?」


 周りからも驚きの余り、口々に囁く声が聞こえる。それもこれも、これが何かどうかの説明が未だレオンからは無いからだ。そしてレオンは何の説明もないままに現れた扉へを開け放った。


「しゃ、ほな、行こか。……あ、明かりはいらんで?」

『え、大丈夫なの? って言うか、多少でも説明は欲しいな』

「でも、見たら一発やで? まぁ危険はないから話がてら見に行こや」


 レオンは胸から上だけ扉からだし、それだけを言うと扉の奥へと進んで行ってしまった。そして取り残された俺達は顔を合わせた。


 レオン曰くは安全らしいが、念の為にシンとソナを見張りに立ててから、俺達パーティメンバーだけがレオンの後へと続くことにした。


 そうしてまずは俺から入る事となった。扉の奥を覗き込めば、奥の方へと螺旋状に階段が続いていた。


 上から見えるのは石垣のように積み上げられた堅牢な造りの岩壁と階段、それに天井から淡い光を灯すクリスタルくらいなものだ。


 この先に何があるのかと思いながら、壁に手を添えながら階段を降りている間もレオンの催促の声が響いていた。


 そのレオンの声に導かれるまま、俺はぐるり、ぐるり、と階段を降りる。そして明かりが漏れる扉を開けると、そこには。


『え、これって……牢、屋?』


 扉を開くと直ぐに目に入ったのが金属の格子だった。そして、その奥に窓の無い四角い空間があった。


 一見、通って来た螺旋階段と同様の造りで何もないようには見えるが、格子状の蓋が嵌った穴らしきものだけがあった。だから俺は牢屋だと思ったのだが、それで間違いないようだ。俺の問いに対して其処に居たレオンは静かに頷きを返してきた。


 黒い鍵で現れた扉の先は、牢屋と通路と扉が幾つかあるだけの空間に繋がって居たということだった。広さはそこそこある。畳十畳ほどだろうか。天井までの高さもある。伝統的な日本家屋よりも高く、西洋風の牢屋と言ったような印象だ。


 となれば、牢屋の鍵が壁にかけられているのかと思い、探して見たがどこにも見当たらない。どうやらそれもダガーが鍵の役割を果たしているらしい。他に気になると言えば扉が幾つか見える点だろう。


 だが、現状は階段以外の扉は繋がって居ないようだ。そんなように見て回る程の広さも無く、皆が集まってすぐに一先ずの見分は終えてしまった。


「な、見たら一発やろ? このダガーは牢屋に繋がる鍵ってことや」

『なるほどなぁ……やっぱ宝箱から出るアイテムってランクの桁が違うよね』

「確かに。ダンジョンが生み出しているのか、人知を超えているのである」

「これ売らんで良かったなぁ? なかなかエゲつない使い方も出来るし」

『あ、そっか、なんか扉を出す以外の使い方があるんだっけ?』

「ただ突き刺して回すだけや。んだらこの牢へとご招待できるっちゅー訳ッ」

『――――――ッ!? ……ハァッ!?』


 突如何をしているのか、レオンは自らの掌にダガーを突き立てた。そして次の瞬間、牢の中から鎖に繋がれた手を振るレオンを見て愕然としてしまった。


 身をもって証明してくれるのは有難いが、突然自らの手にダガーを突き立てた時は驚きの余りに意表を突かれてしまい、言葉も出なかった。


「その“手”大丈夫なの!?」

「ほれっ、真っ直ぐ突き刺したらケガせぇへんねん」

『まぢ、ビックリさせないでよ! もうっ!』

「すまんすまん。あ、その切っ先以外は普通に切れるし、ちゃんと刃も受けれるから使えるで」

『おぉ、それは凄いけど、……レオン、流石に説明なしは心臓に悪いよ』

「すまんな! でも、いっちゃん分かりやすかったやろ?」


 俺は落ちたダガーを拾い上げ、牢に閉じ込められたままのレオンを解き放つ。


 そして、そのままの流れで皆と共にログの酒場へと戻ることとなった。


 それからは皆で席に着き、落ち着いて話し合いをした。そうして、


「ほな。改めてやけど、あの《黒牢の鍵》は、オーエンが持つってことでええな?」


 ダガーの特性を加味した上での決議だ。それをレオンが取りまとめてくれていた。話し合いの中でレオンやウィーツ、それにフーガさんの名前が挙がりはしたが一周回った結果、俺が持つということで落ち着いた。


『じゃあ預からせてもらうね。ありがとう』

「うむ。それがあれば試験も有利になるはずである」

『だね。……ってことで色々調べた方が良さそうだ』

「と、なればまずは壁、天井に突き刺した場合からであるか?」

『そうだね。知っていても、ってことがあるからやっとこうか』

「ねね、それってテーブルの下からでも行けるかな?」

「それも行けるはずやで。まぁ試してみぃ」

『へぇー便利ぃ。そんなこともできるなら調べがいがありそうだ』

「あ、なら私は“発注する物”の取りまとめするわね?」

『うん。ありがとう。じゃあ必要になりそうな物、適当にお願い」

「“任せて”。でも今日は程ほどにね? 明日も試験準備があるんだから」

『あー……そうだね。分かった。じゃ手早く調べて共有まで済ませちゃおっか』

「うむ。……レッツドゥーイット! で、あるな! よし、やるぞオーエンよー!」


 そうして俺達はグインツの掛け声と共に動き出した。


 ダンジョンから戻って来てそれほど経っていないにも拘らず、束の間の休息と食事を取っただけで、また俺達はこの先の未来への準備へと取り掛かることにした。




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