第79話


「うぅ、覚醒、何故、我ではないのであるか……」

「なぁって、マジ泣きすなよ……」

「鼻水も気にしないってある意味凄いよねー」

『……気持ちは分かる、けど、……ね』


 砂まみれになる事さえも気にせず、グインツは地面に額をくっ付けて泣いていた。何がそうさせているかというのだけは、痛いほどに分かる。


 だけれども、そうなるまでに感情をさらけ出す必要はあるのだろうかとも思う。とは言え、これもグインツらしさであり、それもまたグインツの良さであるとも言える。


『……ねぇ、ヨウ? グインツの為にもさ、覚醒した時のことを教えてくれない?』

「うげげげー、汚……あっあぁ、んとねー。あん時は、へぇーそうなんだーって思っててー、それからー、そうそう! ギィ達を見てー、アレ、……あのーアレっ! なんだろ、そのーお掃除ロボットサンバ、見たい? ん、違うなぁ……、なんだろぉ、アレみたいって思って、でもそれが思い出せなくてー、でも、ソレを知ってたことを思い出してー……ってことはアタシの能力ってこんなことも出来るぢゃんっ! あれ? ……理解! って、かんぢー?」


 ヨウは指先をくるくると回しながら説明してくれたが、まるで何を言わんとしているかサッパリだ。肝心な部分が不鮮明で要領を得られなかった。だが、その説明を泣きながら聞いていたグインツが顔を上げた。


「ぎおぐの欠落で、ズズッ、あるな?」

「そ、そうかも……あー! 圧縮ファイルを解凍したかんぢー? ダウンロードしても解凍しなきゃ使えないぢゃん? アレに似てるかもー! 知ってて覚えてるけど奥底に眠ってるかんぢ? まだ全部解凍しきれてなくて半解凍なのかもー!」

『……はぁえー、……なるほど? 俺も、そんな感じだったっけかなぁー……』


 思い当たると言えばそうかも知れない。違うと言えば違うような気もする。とは言え、これはヨウの体感である。ヨウが覚醒した時の感覚はそうなのだろう。だとしてもアレがナニで、ソレでどうなったのかが分からない。


『ちなみに何を理解して、何が出来るようになったか分かる?』

「うんうん! あ、ちょっと待ってて設定するー!」

『……設定?』


 どういう訳か何やら準備が必要なようだ。ヨウはしゃがみ込むと、影に手を付いた。そして目を瞑るとそのまま動かなくなってしまった。


「ギィ! ギッギー!」

「ギヘ!? ギギギー」

「ギィイイイ! ギギ」


 待しかないと見ていれば、準備を整えているヨウの周辺にギィ達が集まって来た。自身らの主であるヨウが何かを始めようとしているのが気になるのだろうか。


 興味津々と言ったように覗き込む者や地面を叩く者、廃墟の外では踊っていたり、ハイタッチしていたりとその反応は様々であったが、そのどれもが一様に喜んでいるみたいだった。


「でーきたっ! かんせー! これで良いかな?」

「ギィギィ!」


 いつもヨウの横に居るギィにヨウが尋ねた。傍から見れば何の変化も無いがギィは何も問題は無いと言うように頷くと満足気にしていた。初めて召喚したギィらしいが、それ以来ずっと一緒だったようでどこか感慨深げにも見える。


『……終わった? それでー……何が、って、お、おぉ!?』


 何がどうなったのかは初めは分からなかった。だがしかし、それを聞こうとした時、横にいるギィが被っている仮面の紋様、それに漆黒の身体に青色の筋が入り始めた。


『お、青色、……おぉ、こっちは緑か! ……ん、変化してないのも居るな。……っておいおいおい、金棒に刺股、斧、それに薙刀か? 危ない危ないッ、見せびらかせたい気持ちは分かるけど振り回すなよ! 分かった分かったのこぎりな?! アブッないなァッ!?』


 小さなギィ達には不釣り合いな、身体の大きさと差ほど変わらないか、身体よりも大きな武具を影の中から取り出していた。そして喜びの余りか見せびらかせる者や、振り回して試し振りする者や、早速チャンバラごっこのように打ち合い始める者等が現れた。


「これで戦力強化ー! 後は緑色の精鋭部隊だけを選んで召喚出来るようにもなったよー」

『す、凄いのは、わ、分かった! だけど危なすぎやしない!?』

「ダイヂョブ! 今後は、この子が他のギィ達の管理を手伝ってくれるからー」

『お、おぉぅ? じゃ、じゃあ頼む! コイツ等をなんとかしてくれ!』

「ギィー! ギギッ、ギー、ギギ、ギベッ、ギブゲッ、ギーギ」


 青色のギィが緑や黒のギィ達へと向けて何かを伝えた。すると話が通じたのか、ギィ達は武器や手を上げて屋外へと出て行った。


『おぉー凄いじゃん。みんな言うことを聞いてる』

「ぢゃないと送り戻すって言ったんだと思うー」

『あぁ、ヨウがたまにどうしても言うこと聞かないギィに使ってるやつか』

「そそそー、あれをこの子が使えるようになりましたーっ」

「へぇー。今後は困らせられることが減りそうやなぁ、便利やん」

「ねぇ、武器を持ってる子とそうじゃない子と、青と緑色の子の“違い”ってあるの?」


 すかさず手帳を取り出していたカノンが能力の詳細を記していた。とは言え、まだ観察している状態で詳しいことは武器による戦力強化位な物しか書けてはいないようだった。


「えっとー青のこの子は私のお手伝い。今は一人だけー。緑の子は全員が武器持ちでー……なんて言うか馴染みの子達で、言うことを聞いてくれやすいかなぁ? 黒の子は今まで通りー」

「ふんふん、なるほど。後は緑の子と黒の子と比べて“少し大きいように”思うのは勘違いじゃないのよね?」

「そそー、どう大きくなるかはその子によるけど、馴染みの子達だから黒の子達よりも成長してるはずー」

『なるほどー……あれ? その青の子が、ちっさいままなのはー……なんでだ?』


 手足や背丈の違いは成長によるものらしいが、一番初めに呼び出したはずのギィはそれほど成長していないように思う。改めて見れば一番小さく、更には緑と黒とも差があるように思える。


「モンスター倒してないからねー? この子も成長の恩恵を受けられるようになったから今後は隣に居るだけで成長してくよーん!」

『あっ、へぇー、なるほど、そっか、そうだよね』

「ギィ! ギッギギギー! ギィー!」

「成長……分かったわ。で、その子を今後は“アオ”って呼ぶの?」

「ギーギ、ギベベ」

「“アオ”はダメみたいね?」

「今後も青の子が増える可能性があるからかもっ」

「ギィ」


 どうやらヨウが言った通りらしい。頷いているからそうなのだろう。だから個別名称をアオとすることを避けたようだ。それか一人一人に名付けをするとなると大変だからだろうか。


『でも、共通の呼び名は欲しいところだけどなぁ……』

「あぁーそーなんだよねー、この子のことをギィって名付けたつもりだったんだけど、今では種族名称みたいになっちゃってるしねー? でも、そうすると名前の無い子たちが可哀そうだしー……」

『あ、ゴメン。……ダンゴとかハナとか勝手に呼んじゃってるのって、……良くないかな?』

「んー、もう定着しちゃったしー? んんー……じゃあ、名前が勝手につくまで自然に身を任せる! ってのはどお? それまで敢えて名付けなくてもいいかなぁー……ギィはどう思う?」

「ギィ! ンギンギ!」


 傍仕えのギィもそれで良いようだ。ならば、それぞれの愛称が決まるまではこれまで通りにしていよう。


 現状それによる問題が差し迫っているという訳でもないし、名付けて無理に覚えるよりは、勝手に定着した名前の方が俺達からして見ても愛着が沸くだろう。馴染みとはそういうものだ。ギィ達も勝手に名前を付けられるよりは己が個性を表した名の方が良いはずだ。


 そもそも会話できぬだけで自慢の名前を持っているかもしれないし、名前が無いことを不憫に思うこともあるまい。それこそヨウが感じているように特別扱いをする訳にもいかないと言う悩みも理解出来るから流れのままに身を任せると言うのが良いように思える。俺が愛称を付けたギィ達が自然とそう呼ばれるようになったのも個性的だったからだ。


 いつも泥団子を作っている子や、悪戯をしているのか親切心からか、いつも花をポケットに忍ばせてくる子みたいに分かりやすい特徴があれば愛称も得られよう。


 その時付けられた呼び名が気に食わなければ首を振って主張してくるし、なんの問題無いだろう。そう考えながらも、配慮が足りなかったと反省しつつ、今後は気を付けようと密かに反省していた。


 そうして一考を経た後に顔を上げると、緑色の筋が入ったギィが掌に砂を乗せて目の前に立っていた。


『……ン? どうした?』

「ギィー……」

『砂? あぁ! 水が欲しいのか?』

「ギィ!」

『オッケー、ちょっと待ってね』


 荒野の乾いた砂で泥団子が作れなかったのだろう。だからダンゴは水を催促しに来たのだ。それに気付いた俺は足元の砂を掘って窪みを作り、水を注いでやった。するとダンゴは嬉しそうに声を上げながら、濁った水をかき混ぜ始めた。


「ギッギッギィー、ギッギッギィー」

『ダンゴも緑色になったんだなー』

「ギ、ギギギッ、ギィーギッギギ、ギー!」

『うん? これで、おっきなダンゴを、作れるってか? ハハハッ、そっか』

「ィー……ギベッ! ギヒーッ」

『あ、ハナー? また何か入れたなー? ……ん? 紙?』

「“花の絵”よ。さっき内緒で書いて欲しいって頼まれたの」

『ハハッ、これは考えたなー、けどイタズラしたいんじゃないの?』

「ギィ! ギギッ、ギヒヒ!」

『やっぱそうなのか。でも、嬉しいよ。ありがとう』

「ギヒーッ、ギギギギー……」

『あ、速っ、これも緑になった効果か?』


 悪戯を成功させたことで満足したのか、ハナは颯爽と駆けて行った。もう既にヨウが覚醒する前よりも素早い。


 ダンゴも大きい泥団子を作ると意気込んでいる所を見るに覚醒の影響はあるようだ。ギィ達がどれだけの成長を遂げたか、一休みを終えた後が楽しみだ。


 それはそうと、うつ伏せになったままのグインツにもそろそろ声を掛けておくべきか。


『どうグインツ? 何か得られた物はあった?』

「大いに得られた。だが、まだである。記憶の欠落が鍵というところまで辿り着くに至った」

『ほうほう……何故そう思ったの? 見解を聞かせてくれるかな?』

「うむ。カノン嬢は覚醒した時、理解したと言った。それはオーエン等とも違う感覚である。カノン嬢だけが己の魔力特性である音というものを知って何を成しうるか、どう扱えるかなどの知識を深めたと言う意味の理解であった」


 グインツは頬が砂まみれになっていても至って真面目だ。もはや砂にまみれることなど気にしても居ないどころか、物影の砂場で涼を取っているかのようだった。


 その光景が気になりはするが、語り口調は真面目そのものだ。こちらも気を逸らさず向かい合って聞くべきだろう。


『よいしょ、うん、それで?』

「オーエン含め、転生者である覚醒組はどうだ? 何かに似ているや、知っている、分かっていると言う感覚だったのではないか? どちらかと言えば思い出したと言う方が近いのでは無いか?」

『ぉおー? ……確かに? 何がどうなって魔法が発動してるかは分からないけど、知ってるから分かるみたいな感覚はあるかも?』

「それである。カノン嬢は、こうすればこうなる、ならばこうも出来る、と言ったような感覚を得たのであろう? 魔力に置き換えた時の拡張性やら、特性に合わせた魔力の使い方を得たと言うような感覚を頭や体が覚えた。そして、それが覚醒である、と気付いたのだ」

「そうね? 流れ込んで来たっていうか、まさに道が開けたような感覚だったわ。それまでは“道具”のように扱っていたけれど、今は“身体の一部”みたいになったって表すのが近いかしら?」


 グインツの話は難しい。俺も一度では理解しきれないから、聞いた言葉を反復して理解するように努めた。この場にいる面々もそれぞれ斜め上を見上げたり、顎に手を添えてたりして考えているようだった。


「と、言うことは転生者とはまた違った覚醒の感覚なのであろう。つまり我等が覚醒する為にすべきことは記憶の欠落を見付けるか、今一度、我等の特性を深く知る事が必要なのだろうと解釈した」

『なるほどー……、記憶の欠落が覚醒の邪魔をしている可能性があるということ? だよね?』

「で、ある。もし我の魔法特性が炎などの一般的な物であれば、もう既に覚醒しているだろうと思えたのだ。だが、我等のアビリティや魔法はユニークであるからして知るにも難しい。故にまだ至らぬという訳である」

『そっかー、なるほど。……ん、うん、ん? 普通の特性なら簡単に覚醒させられるって言った?』

「ものにもよるがそうであろう? カノン嬢の成長スピードからして見ても、そうでなければおかしかろ? 実験でもして見れば確かめられるはずだが、それはそうとして今は我の覚醒に執着したい」

『……実験? あ、うん、グインツの覚醒が先ね? じゃあ後少し休憩しながらグインツの魔法について話し合ってみようか?』

「うむ。是非とも皆の知識、記憶を借りたい。力添えを願うのである」


 そうして俺達は日陰の中でグインツの魔法について話し合うことにした。まずはその見た目から探り、次に類似する物を例として挙げた。


 そして無駄であるかも知れないと思うような考えであっても口に出すようにした。もっともっと、と求めるグインツに言葉を浴びせかけ続けた。


 それはまるで早押しクイズをしているかのようだった。しばらくの間、そんなことを続けていたが、気付けば二度三度誰かが言った言葉やら、似たような言葉の繰り返しになり、そして最後は誰の口からも言葉が出なくなってしまった。


 結局、正解は出なかったのだ。


『……覚醒については、また後ほどってことにしようか』

「うむ。協力感謝である。また良ければ付き合って欲しいのである」

「あいよ。覚醒も大事やけど、一先ずは確実に成長出来る狩りに専念しよか」

「そーだねー。この世界もガチガチにペイトゥウィンだし、稼げるだけ稼ごーう」

「ペイトゥウィン? ……あぁ“お金”のこと? なら、そうかもね」

「ココ、初めて聞きました……ペイー、トゥー、ウィン?」

「簡単に言えば、お金で装備を整えたら勝利が齎されるっちゅーことやね」

『なんか、懐かしい響きだなぁー……あ、皆準備出来た?』

「ウンウン! 万端ッ! まぢ覚醒した力を見せちゃうよー!」

『オッケー、じゃあ、行こうかー、って……何アレ?』


 休息を取った俺達が廃屋から出ると、向こうの方から一体のモンスターを担いで走る複数のギィ達の姿が見えた。


「あれはー……“サンドサーペント”みたいね?」

「なぁ! あのトカゲ見てみぃ! あっちでギィ達がモンスター解体しとるで!」

『えぇ!? あれってサラマンダーじゃない?』

「わぁーお、ボク達が休んでる間に頑張ってたっぽいねー」

「ふむ。特に緑が自主的に行動しているようであるな」

「……す、凄いでス、ココよりも小さいのに力持ち……」

「んんんっ、えらーいっ! 覚醒って、サイコーぢゃーん!」


 どうやらギィ達は討伐班と解体班で別れて行動していたようだ。それだけじゃなく血の匂いで他のモンスターが寄らぬように少し離れた位置で解体作業をしている。


 今までも退屈しのぎにモンスターを狩りに出る者はいたが、これ程までに効率的では無かった。どちらかといえば好き勝手に遊んでいると言う方が近かったように思う。しかしながら、覚醒を経た後の現在のギィ達からは自主性に加え、統率力を感じられた。


『ギィ達も覚醒を切っ掛けに張り切ってるのかな?』

「これはオレ等も頑張らんと出る幕あらへんなるで……」

「確かにー。ボク達も負けてらんないねー」


 俺達一人一人とギィ一体を個別に比べれば、俺達が上げる成果の方が多いのは確かだ。だが、ギィ達の数は多い。そのギィ達が成長したお陰もあって更に狩り効率が向上することが目に見えていた。


 覚醒後の今もヨウが同時に召喚できるのは平均して30体程なのだろうか。新たに召喚しようとしないところを見るに上限は増えていないのか制限しているようだ。なんにせよこの光景を見たことで競争心を燻ぶられてしまった。


『まだ初日だけど、探索範囲を伸ばして見ようか?』

「エン? とりあえず“様子見の3日間”じゃなかったかしら?」

『いやッ、もちろんそうだよ! えーと、なんて言うか、その……ダメ?』

「あぁもう、貴方はいつもそう。でも、駄目じゃないことくらい分かってて聞くのが“ズルイ”わ」

『え、あ、ゴメン。その、確認だよ確認。……だけどーカノンがいるしさ? ホントに駄目なら止めてくれるじゃん?』

「ッ……それ、分かってて言ってるのよね? じゃないと“有罪”だから……」

『う、うん。俺って熱くなりやすいから止めてくれる存在が居ないと、どうしても、ね?』

「……は? 何それ。もう知らない。“リーダーに”任せるわよ! ……オーエンの……バ……」


 意思疎通が取れていると思った矢先のことだった。カノンは俺の性格をよく知ってくれていて分かってくれている。そう言うことなのだろうと思った。だがしかし、俺は言葉選びを間違えてしまったようだ。


 普段パーティメンバーの前で素の感情を露わにすることがあまり無いというのに素っ気ない態度で俺の元から離れて行ってしまった。


「オーエン、そらアカンわ」

「オー君、んんんッ、ギルティー!」

『……え、なに、どういうこと!?』

「ほんとにいるんだねーこういう人」

「オーエン。止めて欲しい時は我を頼ると良い」

「そ、そう言う話じゃー、無いと、……思いまス」


 俺とグインツを皆が冷ややかな目で見ていた。俺の気持ちが分かると言ってグインツは共感を示し、肩を組んで来たが俺と同じようにグインツもまるで何のことだか分かっていないようだった。


「ほな、熱い友情を交わしてるボーイズは置いていこかー」

「ぼッ、ボボッボッ、ボーイズ……、えと、じゃあ、ココはもうちょっとだけ見てまス……」

「へえー! ボク知らなかったなーココちゃんってそっちの趣味が好きなのー?」

「ぴゃッ、い? なにガ、ですカ? ハハ、アンビシャス! ビー、アンビシャス、デスヨ!」

「さぁ! 我が盟友よ! 我等も行こう! 熱き荒野にて更に熱き友情を育もうでは無いか!」

『え、ちょっと待ってよ! なんかモヤモヤする! モヤモヤすることが多過ぎるよ!』

「三日間ッ、ゴリッゴリッに、行くでーッ! ゴー!≪カノープス≫ゴー!」

「盟友、モヤモヤ、……ゴリッ、ゴリ……、……ぁはぁ」


 纏まりがなく緊張感の無い雰囲気であると言えばそうだろう。だが裏を返せば皆がリラックスできているという証拠でもある。今はどの顔みても、このエリアに足を踏み入れた時の顔付とは違っている。


 そうして俺達は和気あいあいとした雰囲気の中、荒野と砂漠エリアの未知を求め、期待に胸を膨らませながら探索を再開した。

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