第8話 Bパート

Bパート


朝登校して教室に入ると海姫が目を腫らした雪乃を心配して話しかけていて雪乃は迷惑そうにそれをあしらっている。海姫は教室に入ってきた紅葉もまた目が腫れていることに気づき話しかけ、紅葉も雪乃と同じようにそれをあしらう。海姫は扱いに不満を述べつつ訳ありげな二人に配慮して別のグループに紛れ込んでいく。

その後授業中も休憩時間も何事もなかったように振る舞う雪乃。昼休憩に入り、紅葉のスマホに放課後雪乃の部屋に来るようメッセージが入る。

放課後、雪乃の部屋。

部屋に入って開口一番、雪乃に謝る紅葉。ねいじゅの引退を止めるために始めたはずがいつか楽しくなって自分のために配信をしていたこと、手助けしてもらっていたのにも関わらず予選敗退で終わってしまったことを詫びる。

紅葉の言葉を途中で遮り、頭を上げるように言う雪乃、その瞳はわずかに潤んでいる。

紅葉の努力と想いが通じたことを打ち明け、紅葉を尊敬に値する配信者だと称えて自分もまた新たな気持ちで配信を楽しみたくなったと話す。

その言葉に感激して思わず雪乃の手を取る紅葉、また振りほどかれるかと思い慌てて手を放そうとする紅葉の手を雪乃は逆に握りしめ、頬を赤らめながらねいじゅの声色で「ねいじゅを助けてくれて、ありがとう。アキバくん」と紅葉に改めてお礼を言う。

感激して悲鳴を上げる紅葉。びっくりして手を離し、ジト目で紅葉を睨み「やっぱりやめておけばよかった」とつぶやく雪乃。


「話があるの」と言う雪乃に促されてソファに座り待つ紅葉の元に雪乃が飲み物とお菓子を持ってくる。しばらく無言のティータイム。紅葉に続き、紅茶を飲み干す雪乃が口を開く。

紅葉のためにVライバーとしてのキャラクター『紅璃栖はいね』の準備をしていることを話し、そのラフ画像をタブレットに出して紅葉に見せる。

『紅璃栖はいね』のビジュアル描写。感嘆の声を上げてラフ画をまじまじと見つめる紅葉。


「これって……!? 僕が、この子をっ!?」

「うん、紅葉くんのためにデザインしたの。これから私と一緒に活動してもらおうと思って。どう? やりたい?」

「ええっ! ねいじゅちゃんと僕がっ!? もっ、もちろんだよっ!」


目を細め、口角を上げて微笑む雪乃。


「ただし、一緒に活動するのに当たって条件があるの。秋月くんには心当たりがあるんじゃない?」

「えっと……?」

「じゃあ、詠永ねいじゅが誰かわからない男性Vとコンビを組んだらどう思う?」

「絶対許さない」


それを聞いて雪乃はタブレットに表示されたねいじゅとはいねが並ぶラフイメージを指差す


「あっ! そっか……」

「紅璃栖はいねの中の人が絶対に男性だとバレてはいけない。もしもバレたら、炎上して私も活動できなくなるかな…… そうなったら引退するだけだけど」

「そんなっ……! そんなのダメだよ!」

「それなら、秋月くんが紅璃栖はいねを完璧に演じられるようになるしかないね。デビュー予定は六月一日だから、それまでに」

「えぇっ! 六月一日って、あと一ヶ月で!?」

「できるよね?」

「えっと…… 絶対バレないって自信は無いけど、ねいじゅちゃんのためだし、できる限りのことは……」

「心配しなくても優秀なボイストレーナーさんにお願いしてるから、一ヶ月みっちり特訓して紅璃栖はいねになりなさい」


紅葉の返事に目を細めて怪しげに微笑む雪乃、時計にチラリと目をやると、インターフォンの呼び出し音が鳴り、モニターに寧音子が映し出される。


「はい、柊雪乃です」

「あっ! 柊さん、こんにちは。春咲音楽教室の春咲寧音子です。ボイストレーニングの個人レッスンに伺いました!」

「こんにちは。寧音子さん。来てくれてありがとう。どうぞ、上がってください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【プロット】バーチャルライフ・バーチャルライブ 藤屋順一 @TouyaJunichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る