第2話 日本だった

 奥ー様の名前はトメノ、旦那様の名前はタケミ、

 ごく普通の2人はごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。

 ただ一つ違っていたのは、2人とも魔法使いだったのです。


〜・〜


 ガサガサ、ガサガサ、なかなか見つからないわね。

 新しい発見をした。鑑定の魔法にアラート機能をつけられる事に気がつきまして、早速、試してみている所です。食用油に適した物に近づいたらアラートが鳴る予定です。あと、ハーブ類もです。


「それにしても、可笑しいな。ドラゴンどころか、ゴブリンさえ出て来ない」

「確かにそうね。森の植生が日本と一致しているわ」

「ちょっと、街を探してみるかい?」

「そうね、主食が欲しい所ね。海を海岸沿いに移動してみましょうよ」


〜・〜


 海岸に着くと、スナップ。舟と簡単な帆が出来た。舟を海に浮かべ、帆に風魔法を当てる。


「あら、あんな所に入江があるわ」

「ちょっと、近づいてみよう」

「あらあらあらあらあら、日本人よねぇ」


 帆に当てる風向きを変えて、入江に近づいてみる。市が立ってる様だ。


「日本人だよね。この格好じゃあ、ちょっと目立つな。スナップ」


 トメノさんを見ると、自分で着替えてた。そりゃそうだ、大人だもの。

 僕は某ドラマで見た、町人風に着替えてみた。そのまま舟を岸につけて、市場を歩いてみた。


「何時代かしらね?」

「ちょっとごめんよ、実は気を失ったまま舟でここまで流されて来ちゃって、ここが何処だか分からなくて困っているのですが、此処がどこだか教えてもらえますか?」

「そりゃ気の毒だったね、ここは佐渡の両津だよ」

「ほう、佐渡とは、これまた流されたねぇ。えと、じゃあ、越後のお殿様……何てったっけ?」

「長尾様かい?」

「長尾ため〜」

「為景様だね」


 たぶん、1500年代だね。まだ佐渡で金山も銀山も見つかって無い。取り敢えず、そこに有る銅銭をよく見て、スナップ。よし、これでお金の心配はなくなった。トメノさんは……あ、見つけた。


「何か欲しい物は有ったかい?」

「種籾とか、増える種系が欲しいわね」

「種籾とかの件なんですが、ちょっとだけ待って貰えますか?3日分位の食料を買ったら、一旦戻りましょう」

「はーい」


 布を買ってスナップ。リュックになる。買った物をリュックに入れる振りをしてボックスに入れていく。では、僕らの家に戻りましょう。網を買ったのでスナップ。舟に付けて底引き網だ!成功したら松葉蟹だよ。


〜・〜


 成功、成功。底引き網、魚を大量ゲットだぜ。


 大量に買って来た大豆をスナップ、味噌。スナップ、醤油。


「見て見て、トメノさん。醤油と味噌だよ!刺身を食べられるよ!」

「あらあらあらあら、素敵ね」


 ん〜、悩む。ここで魔法冷蔵庫から魚を出して、ヒラメ、イカ、アマダイをスナップ。スナップで大皿を作って、そこにお刺身を飾っていく。


「トメノさ〜ん!ブランチ出来たよ」


 あ、刺身だけだ。ご飯はスナップで良いや。スナップ。何か白米だよ。久しぶりだな。


「はーい、おまたせ」

「じゃあ、食べようか、いただきます」

「いただきます」

「トメノさん、緊急動議が有ります。議題は住居はこのまま佐渡で良いかです」

「はい、タケミさん、その動議に至った理由を述べて下さい」

「はい、トメノさん、今朝の買い物中に思い至ったのですが、私達、魔法使いは、転移魔法も使えるのではないかと。帰宅後に実験してみると、1.行った事がある場所には転移出来る。それが転生前でも行った事が有れば転移出来る。2.行った事が無いと転移出来ない。3.土地の名前が分からなくても、イメージ出来れば転移出来る。イメージ出来なければ転移出来ない。と、なりました」


 日本海のお魚美味しいです。お刺身が醤油が滲みるぜ。


「佐渡はこれから半年間は良いのですが、冬を越えるのがキツい思われますが、トメノさん、ご意見は有りますか?」

「私も寒いのが苦手なので、冬の北国は遠慮したいです」

「では、過半数を占めましたので、ここをベース基地と定め、あとは気のまま過ごす事に決まりました。きっちり決める事なかったね。いつでも行きたい所に行けるんだから」

「そうそう」

「でも、どこに行くにしても、お金は必要だから、金銀掘りを頑張ろうと思ってるけど。ん〜、やっぱり俺が悪いんだけど、食事中に余計な話はダメだね。せっかくのお刺身なのに。次回は僕を注意して下さいね。忘れちゃうから」

「はいはい。それでね、せっかく、新潟なんだから、田んぼをやってみようかなって思って」

「うんうん、魔法の練習がてら、色々試してみると良いよ」

「あ、そうか、魔法が有れば、特に頼む事も無いわね」


 食事を終え、ちょっとダラダラタイム。

 『ボックス』と唱えて、ボックスからコットンを取り出す。もう1回行ってみるか。


「トメノさん、コットンを取りに三河まで行くけど、一緒に行くかい?」

「タケミさん、行かない理由が無いわ」


 じゃあっと、手を繋いでスナップ。お、一面の木綿畑。でも荒れてるんだよね。三河で木綿栽培が発展するのは100年後くらい。そこから、TOYOTAが豊田自動織機として出てくるんだろうね。歴史って面白い。さて、ハリーがやってた引き寄せの呪文で、この綿花を一網打尽でボックスに入れてやるぜ。あ、もしかしたら『コットンよ入れ!』ボックスを開いたまま唱えると、辺り一面の綿花が僕のボックスの中に。やった。

「トメノさん、何か気になる物でも有りましたか?」

「いえ、特には」

「コットンの栽培って出来ますか?」

「佐渡ではちょっと無理かな」

「そっか、残念。では奥様、お手をよろしいですか?」

「良きに計らえですわ、ホホホホホ」


 手を繋いで、スナップ。到着。

 まずは家の中に戻り、スナップ。ベッドにコットンで出来たマットレスとシーツと掛け布団。『クリーン』と、一応かけておく。また、玄関を出た所をオープンデッキっぽくして、屋根も広げて広めのソファベッドを作る。また、外でゴロゴロ寝るんだ。


「トメノ!どこ?棚田っぽくするなら、作るの手伝うよ」


 遠くからかな?


「大丈夫、ゆっくりやるわ」

「分かった。鎌倉で砂鉄採ってくるね」

「はーい」


 との返事。ブラタモリで鎌倉の砂浜は砂鉄が多いって言ってたからね。では、スナップ。

 いつの時代も、海は海だね。気持ちいい。ボックスを出して、『砂鉄よ集まれ、ボックスの中に入れ』と唱える。結構必要なので、一山持って帰った。早速、作ったばかりのデッキのソファベッドにゴロゴロしながら、スコップをスナップ。鍬をスナップ。備中鍬をスナップ。ツルハシをスナップ。これだけ有れば良いか。

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