第92話
修行を始めてからどれくらいの月日が経ったかはわからない。
俺と同い年の剣聖と同じ実力を持つ人間並みのサイズのデッサン人形と闘い続ける。
それはいろんな戦い方をしてくる。
時に騎士のように、時に侍のごとく、時に獣のごとくその動きは予測ができなかった。
砂をかけたりする卑怯な動きや、頭突きや蹴りも当然のごとく、剣術の中に取り入れている。
これまでに全身の骨で折れたことのない骨はない。
全身をズタズタにされて何ども気絶してその度に回復をした。
その反動で馬鹿みたいに肉を食べた。
バレインは当然のように大量の肉を用意してくれた。
恐怖がなかったわけじゃない。
だが、それ以上に負けて仲間を失い、失う以上の屈辱を味合わせられることに比べたら俺の痛みなんて些細なものだ。
俺の痛みを和らげてくれたのは、ランセリアの笑顔と温もり。
そしてシエスタやムセン達との冒険の楽しい日々を思い返すことだった。
※ ※ ※
死に物狂いになってやっとのことで俺は剣聖の剣を防御をすることができるようになった。
だが、防御ができるからと言って攻撃ができない以上、俺の勝つ確率は存在しない。
ましてや体力勝負で俺が勝てるはずもない。
苦難の日々が続いた、
俺は訓練の前にひたすら素振りをした。
薪割りも筋トレも馬鹿みたいにやった。
呼吸が苦しい事にもだいぶ慣れた。
そして早朝、俺はバレインを起こし、デッサン人形を出してもらう。
俺は一瞬で距離をつめる。
俺は剣聖もどきの人形の一撃を片腕を犠牲にして、受け流し、利き腕の剣でそいつの首を薙いだ。
朝日が昇る。
俺は勝利に叫ぶのだった。
バレインは素直に称賛して拍手をする。
俺は照れる。
だが、バレインは言う。
「お前は自分と同年齢の俺を超えた……だが若い頃の俺並みに強い軍隊と相対した時、お前は何も守れない」
俺は骨折した腕を彼に治療してもらいながら、ため息を吐く。
「まだ、上があるということか」
「そうだ、圧倒的な強さとは、圧倒的な死の恐怖を乗り越えた先にある」
そういって彼はデッサン人形を三体召喚するのだった。
俺は叫び、立ち向かう。
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