第93話
デッサン人形との戦いを毎日続けるが、連携の取れた人形の数の暴力を覆すほどの実力差は当然のごとく、今の俺にはなく、それなりの年月が必要だった。
ましてやいろいろな戦い方を混ぜる。
バレインが補足説明する。
「あぁ言い忘れていたが、剣を使える奴ばかりと闘っていたら戦い方に癖ができるからな、今度の人形は槍とか弓とかいろいろな武器を使用するし、魔法もあるからな気をつけろよ」
「冗談きついぜ」
「まぁ駄目ならいつでも田舎に帰るんだな」
俺は返答の代わりにバレインから渡された真剣を握る。
※ ※ ※
「ランセリア……ただいま」
「おかえりなさい、リョウキ、大丈夫?」
「大丈夫とはいいがたいかな」
俺はランセリアに肩を借りて、料理を作る。
「今、夕飯の支度をするから」
「む、無理しなくていいよ」
「俺は仕事に手は抜かないんでね」
食事をともにとって、俺はランセリアに修行のことを話す。
「そんなことをしていたら、体がいくつあっても足りないわよ!」
「心配してくれるのか?」
「ばっ!違うわよ……仕事、そう仕事に支障をきたすでしょ!」
「手厳しいな」
「でも、む……」
「む?」
「無茶はしないでよね」
「ありがとう」
俺は微笑みランセリアの頭を撫でる。
「いきなり、何するのよ!」
「あっごめん、嫌だったな」
「あっ…………」
名残惜しそうにするランセリア。
俺が微笑むと、彼女はむくれる。
「あなたなんてさっさとそのシエスタとかいう女の元へ帰っちゃえばいいのよ、別に寂しくなんかないんだから!」
「俺はお前が寂しくて泣いちゃんじゃないかと思ってよ」
「バカ言わないで、私が泣くわけないでしょ!」
「そうだよな」
俺はランセリアにいつものように本を読んであげて、眠るのを待つ。
俺がランセリアに毛布を掛けると彼女は眠そうな声で呟く。
「あんたは、私のお世話係なんだから」
言葉以上の意味を俺は解釈して微笑む。
「ねぇ……リョウキ」
俺はベッドのふちに座る。
ランセリアの不安げな声。
俺は優しい声で返事する。
「お花ってどんな色をしているの?」
「そうだなぁ……いろんな花があるけど」
「私、綺麗な景色が見たいな」
「あぁ……任せろ、とびっきり綺麗な場所へ連れて行ってやるよ」
「ありがと……でも私目が見えない今も……その……」
「そっか」
しばらく俺が彼女の頭を撫でる。
月明りが綺麗な夜だった。
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