第61話

 「させないわよ!」


 右肩に立った花蓮が、サテュガンの前に突きだされた傷のついていない腕に向かって一歩を踏み出す。

 

 彼女の剣が太陽の光を反射して俺が少し目をつむった次の瞬間。


 剣が肉を割く音が連続して聞こえる。


 傷口から鮮血を吹きだすサテュガン。


 再び悲鳴を上げ、サテュガンの両腕はだらりと垂れ下がる。


 地面に降り立った花蓮は腕を斬った要領で奴の三つの目と足を切り刻む。


 サテュガンは両膝をつきゆっくりと前に倒れる。


 土埃を立てて俺はせき込む。

 

 奴は灰となって消滅し、巨大な黒い魔石と同じくらい大きな宝箱を出現させる。


 ※ ※ ※


 すでにアリサとムセンは俺の遥か先を進んでいた。

 

 アリサが力の強いドワーフだということをすっかり忘れていた。


 俺がまだここにいるのは、ムセンに数分前に「魔力の切れた花蓮を連れて帰れ。護衛は手負いの俺だけで十分だ」と言われたからだ。


 花蓮も戦闘に集中していたのもあるが、俺が戦いを見ていることを咎めはしなかった。


 「まったく、ムセンさんが気を利かせてくれたのね。まぁいいわ、私の魔力とかけたアクセルの魔法の効果もあと少しだし……撤退しましょ。肩を貸してくれないかしら?」


 俺は頷いて、サテュガンを倒した喜びもそこそこに、花蓮に近寄る。


 一歩、俺が歩いた瞬間だった。


 どこからともなく、人一人分の拍手の音が聞こえた。



 

 

 

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