登場、山賊の王ローガ

第62話

 拍手の音は数秒鳴り響いた。

 

 「なによ、わざわざ拍手なんてしなくても……」


 花蓮が照れ笑いを浮かべるが、俺が静止したまま、拍手の音が聞こえるという怪奇現象に思わず怪訝な顔をする。


 「なに……何が起こっているの?」


 「わからない」俺は周囲を見やる。


 突然土埃がまう。


 地面の小石が小刻みに震える。


 土埃の中から現れたのは


 それも俺よりも少し高い身長の男だった。


 ※ ※ ※


 赤くて前髪が長い。


 琥珀色の鋭い瞳。


 肩に毛皮が縫われた、黒いマント付きの黒い鎧。


 ギザギザの歯。


 拍手の音がなぜでていたのか。


 それは目の前に突如現れた男が拍手をしていたからだということを俺は数秒かけて理解した。


 「こいつを一人で倒すとは、Dランクの冒険者にしておくのはもったいないな」


 男の声は若く、拍手を終えた後、そいつは笑った。


 「誰なの?」花蓮は味方かどうかわからず不安をまとった声音で問う。


 「誰……あぁそうか俺様のことを知らないということは、お前ら……さては異世界人だな?」


 「えぇ……だったらどうなのよ?」


 「俺はお前らの仲間をとらえた山賊のトップ、ローガ様だ」


 男は自慢げに自身の名を名乗り不敵な笑みを浮かべたのだった。


 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る