第59話

 ゆっくりと立ち上がるサテュガン。


 奴は大きく息を吐く。


 アリサが舌打ちをする。


 俺は状況を把握するので精一杯。


 ムセンが狼のように唸り、咆哮しようとする。


 だがそれより先に女の咆哮が聞こえた。


 「あああああああああああああああああ!」


 俺の前に立ったのは―――――。


 花蓮だった。


 「よくもシエンさんを、ポールさんを、カルナさんを、クラスのみんなを……全部、全部……お前のせぇええええええだあああああああ!」


 花蓮はすぐに腰にある剣を引き抜く。


 サテュガンは鼻で笑う。


 「花蓮ちゃん!」アリサが叫ぶ。


 ムセンがそれに続こうとして体の傷に表情を歪ませる。

 

 彼は舌打ちして叫ぶ。


 「一人で突っ込むんじゃねえよ!」


 花蓮がアリサにポーションを三つ渡す。


 アリサがそれを俺にゆっくりと飲ませる。


 一つ目のポーションを飲むと、思考が活発となり、安心感に包まれ、思考が冷静となる。


 二つ目のポーションを飲むと、俺の体に力が宿る。


 三つ目のポーションを飲むと、疲労感がなくなり、俺の体にある傷が全て完治する。


 「どうやら、シエンが持ってきた薬はこれで最後のようね」


 アリサは冷静に言い放つ。


 「なんで、俺なんかにこんな……」俺は疑問を口にする。

 

 花蓮は振り返って笑う。


 「これであんたのいつかの借りは返したわよ。あんたが生き残らなきゃ、誰がこのことを報告するのよ。もとはと言えば、私のわがままから始まったわけだしね……守られてばかりは、もういやよ」


 そういった彼女は加速魔法のアクセルを自身にむけて唱える。


 彼女の様子の変化にサテュガンは眉の片方をあげて怪訝な顔をするのだった。


 

 


 

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