第58話

白い光が消えたことがわかる。


俺、花蓮、ムセン、アリサの四人はゆっくりと目を開ける。

 

目の前にはシエンが倒れていた。


「…………シ……エン」


俺は彼女の元へと近づき彼女の背中に手を置く。


彼女を目覚めさせようとするが、彼女はぴくりとも動かない。


サテュガンもシエンの魔法によって倒れていた。


だが、そんなこと、どうでもいい。


「師匠、カルナ、シエン」


俺は倒れた三人へ視線を向ける。


三人は倒れた場所のまま動かない。


アリサがゆっくりと俺の元へ歩み寄る。


「あいつの闇魔法はおそらく、範囲内の対象を一定の確率で戦闘不能にさせる魔法。魔法としても十分ダメージを与える強力なものだけど……魔力消費が激しい。背後にあるシエンの神聖魔法も効果をまだ発揮していた。強力な魔法は使うと次の行動までに数秒かかる。その隙をシエンが自身の魔力を全て放出し、自爆した。たぶんリョウキが無傷なのは幸運だし、私はもともと魔法耐性が高いから……」


アリサがそういって、ムセンが問う。


「あいつらは助かるのか?」


「今からこの山をすぐに下ったとしても経過する時間を考えると、教会の集中治療でも助かるかどうか……せめてSランク冒険者のみが使用できる大聖堂の治療なら治せるかも」


「くそが、おい兄弟……リョウキ!」ムセンが叫ぶ。


俺は何も聞こえなかった。


自責の念と、後悔が俺を支配していた。


理性の糸が俺の中で途切れようとしていた。


俺がうめき声のような声をあげる。


アリサが俺の目の前に立つ。


彼女は俺の頬を思いっきり引っ叩く。


※ ※ ※


「しっかりしなさい!私の目を見なさい……目を見ろ!」


俺はゆっくりとアリサの瞳を見る。


力強い瞳。


「あなたはやれる!」


「俺は……」


「そうよ、あなたはまだやれる。あなただけが頼りなの!」


「俺だけが……」


「そうよ、だから立って!立ち向かいなさい!」


俺の思考が明瞭になる。


途切れそうだった糸がまたピンとはられたのが分かる。


俺はメイスを握る。


その直後だった。


サテュガンの指の一つがピクリと動く。


 


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