第54話

 目が紫色で体が白いサテュガン。


 その手は近くで見ると不気味だった。


 人間のように五本の黒い指があり、その指の一つ一つは俺ぐらいの長さだ。


 ポールとムセンがなんとかその手に握りつぶされないように剣を振るい時を稼ぐ。


 アリサが両腕を前に突き出し、魔法陣を両手から発生させる。


 一つの魔法陣の中央から小さな白い球体を一つ出現させる。


 シエンが花蓮を壁魔法で守りカルナが「行くわよ……精々邪魔にならないようにね!」と俺に話しかける。


 「待って!」


  花蓮が叫ぶ。 


 「これをもっていって!」


 「これは……?」俺は投げ渡された二つの小さな赤い液体の入った魔法瓶の一つをカルナに渡し、それを見つめる。


 「身体能力をあげる薬よ!あいつは冒険者数人がかりでも倒れない!」


 俺とカルナはすぐにその渡されたポーションを一気飲みする。


 ———効果はすぐにあらわれた。


 体から力がみなぎる。


 「行くぞ!」と俺が言って、カルナが頷く。


 アリサが白い球体をサテュガンの目の前に放つ。


 閃光魔法であるそれは、強い光を放つ。


 仲間全員が数秒目をつぶり、やがて閃光魔法が消失する。

 

 「GEEEEEEEEEEE!」


 サテュガンは目をくらませ悲鳴を上げる。

 

 ポールとムセンが顔を見合わせて頷きあう。


 視力を一時的に失い、でたらめに攻撃するサテュガンの両腕を二人は同時に後ろへ弾き飛ばす。


 サテュガンは一歩、後ろに後ずさりする。


 だが、そこにはシエンがつくりだした神聖魔法の領域がある。


 それに触れるとサテュガンの足は焼けるような音をたてる。


 サテュガンはまたも悲鳴を上げてさらに後ろへよろける。


 俺とカルナは全速力で駆け抜ける。


 体が鳥の羽のように軽い。


 これなら、いける!


 俺とカルナがサテュガンの両足の前に立つ。


 サテュガンはパニックのままだ。

 

 俺とカルナはサテュガンの両足を後ろへと押し出すように攻撃する。


 確かな手ごたえを感じる。


 「GEAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


 と悲鳴を上げてサテュガンは後ろへと倒れ、神聖魔法の領域へと倒れる。


 ※ ※ ※


 背中が焼けるように音をたて、その痛みに叫ぶサテュガン。


 「アリサとシエン、花蓮は魔力回復しろ!」ポールが叫ぶ。


 俺とカルナ、ポールとムセンがひたすら、攻撃を奴に与え続ける。

 ※ ※ ※


 ここまでは作戦どおりだった。


 四人全員が肩で息をする。


 ムセンがとどめの一撃を食らわせようとする。


 ——————だが、閉じられていた奴の三つの目が突然、勢いよく開かれた瞬間。


 奴の傷がみるみる消えていく。


 奴の肌は硬くなり、ムセンの大剣ですらダメージを与えられず金属同士のぶつかる音が鳴る。


 攻撃していた4人は何が何だかわからずにいた。

 

 アリサが叫ぶ。

 

 「今すぐ、そこから離れ――――――」


 


 


 

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