第51話
四合目まではムセンの案内の元安全に進むことができた。
雑魚モンスターは乱獲、もしくは魔物避けのアイテムの効果によって近寄ってこない。
稀に人食い植物魔物に襲われるも、特に誰かがその餌食になるということもなく、順調に歩を進めた。
できる限り急いで先を進む。
酸素が薄い。
呼吸もつらくなってきた。
山岳の人間族であるポール以外は少し辛そうだ。
植物型モンスターを剣で倒したポールが剣を納め息を吐く。
どこか憂いを帯びている顔をしたポールにムセンが問う。
「どうした?」
「……強い魔物の気配をこの先から感じる」
「奇遇だな、俺もだ」とムセンは不敵に笑う。
「よくそんなのがわかるな、二人とも」と俺はやっとのことで瀕死の魔物を退治して呟く。
「まぁ……山賊の数や強力な魔物に苦戦したら応援が来るように一応、役所とギルドには僕がリョウキに頼んで書類をかいてもらったけど」
「今言うか、それ。別に俺達だけでも何とかなるだろ」
「まぁ何はともあれ、油断は禁物だ」ポールがそう言って他の仲間全員が頷く。
「少し休もう、暗くなってきた」彼は続けてそういって、俺たちは焚火で暖を取る。
※ ※ ※
俺が少し眠った後、見張りのシエンと少し会話する。
「よく眠れましたか?」
「あぁ」
焚火を見つめながら二人は少し黙る。
焚火からバチバチという音が鳴る。
俺はどうも気になっていることをシエンに聴いた。
「俺のことをシエンは守ってくれるって言ったよな」
「……そんな恥ずかしいセリフ、よく覚えていましたね」
「いや、嬉しい言葉だよ……でも気になったんだ」
「何がですか?」
「同じ普通の人間族で神官の使命感からくる言葉だとしても、君はどうして……なんでそこで笑うんだ?」
「いえ、変なこと聴くなぁッと思って」
「そうか?」
「冒険者が仲間を守るのに理由なんていらないじゃないですか」
俺はその言葉に焚火とは違う温もりを感じた。
他の仲間の視線をテントから感じたのはそれから少し後であった。
そそくさとわざとらしい寝息を立てるムセン達に俺とシエンは苦笑いするのだった。
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