第47話
ポールが花蓮を、俺がとっさにシエンを助ける。
お姫様抱っこで抱えられた花蓮とシエンは赤面する。
うるさい羽音で土埃をあげたキングキラービーはその後も単調な低空攻撃を繰り返した。
奴らは縄張り意識が強いため深追いをしないし知能が低いためか攻撃は単調だ。
蜂だからバジリスクほどではないが強力な毒を有し攻撃速度が速いためその二つに気を付けなければならない。
子分を殺して弱点を知っていればそれほどの脅威ではない。
「みんな下がって!」
アリサが叫び、魔法陣から巨大な氷の玉を発射する。
当然、キングキラービーはこれを一度は避ける。
だがホーミングの施されたその氷の玉は軌道を修正し、キングキラービーへと命中する。
鈍い音を立てて命中したかと思うとキングキラービーは地面へと落下する。
カルナとポール、ムセンと共に俺はキングキラービーへと物理攻撃を行った。
さすがは蜂の魔物のボスだけあってなかなかしぶとく4人がかりでも数分間攻撃し続けた。
俺の棍棒の一撃を最後にキングキラービーが消滅する。
キングキラービーがいた場所から黄色い魔石が落ちる。
魔石はいろんな用途に使われる万能な石であるが、魔物の乱獲をすると質が悪くなる。
バジリスクレベルの魔物だとどういうわけか宝箱が落ちるらしいが、詳しい理屈はいまだ謎だ。
キングキラービーの魔石でも人間の拳くらいの大きさの魔石が落ちる。
俺はそれを持ってきた書類に記録する。
森の中で魔物が魔石を使うということはあり得ない。
いうなれば仲間の死体の一部を回収するだけで何らメリットはない。
図鑑の豆知識もこまめに読んでおいてよかった。
「まぁ、この手ごたえから察するに、Cってところかな」
ポールがそういう。
俺はポールの言葉があっていることに少し驚きながら、頷く。
「よし、まぁ縄張りに入ったアレくらいしかここら辺には魔物は出ないだろう、今日はここで一泊だ」とムセンがいいながら大剣を背中に納める。
「そ……そんな、もっと進めるはずです!」花蓮がその判断に反対する。
ムセンはその言葉をうるさそうに耳を指でほじりながら受け流し、空を指さした。
「山の天候は変わりやすい、時期に雨が降る。雨で匂いが分からなくなるから先に進みたいのは俺も同じだ。だが悪天候で進んだら山賊どころか道に迷って帰れなくなる」
花蓮は視線をポールや俺にやるがその判断が変わることはない。
カルナが持ってきたテントを設置し花蓮がそれを手伝う。
ムセンとポールが焚火の準備をする。
テントの外に俺とアリサはいた。
風が強くなってきたのでアリサが慣れた手つきで小さな白い魔法陣を手から発生させる。
すると、白い半球がテントを覆う。
「これは?」思わず俺が疑問を口にすると、アリサは疲れた肩をトントンと自分の拳でたたきながら教える。
「雨風だけをしのぐ魔法よ」
「アリサって何でもできるんだな」感心すると彼女はそっぽを向く。
「別に……こんなの誰にでもできるわよ」
「それでもすごいよ」
「なによ、調子狂うわね」
シエンが「ご飯の準備ができましたよぉ」というので俺とアリサはテントの中に入る。
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