第43話
「本当は、あんたに頼りたくなかった」と花蓮は言う。
俺は沈黙で返す。
「いつもボーっとして何考えているかわからないし、人と関わろうとしないあんたに頼ったって何も変わらないって」
俺は黙って聞く。
「でも、仕方ないじゃない、異世界人は日本の移民みたいに差別ってほどじゃないけど決して特別扱いされない……最初は魔法の世界なんて面白そうなんてそう思っていた……けどもううんざりよ」
その言葉を最後に黙る彼女。
「結局、俺に助けてほしいのか?」
「でも、依頼には報酬を必ず用意しないといけない……お金なんて払えないし、同じ異世界出身だけどあんたが欲しいのなんてわからないし」
「まぁな……おい、もう泣くなよ、俺が変な目で見られる」
「ごめん……」
うつむく彼女を見ながら俺は溜息一つ吐く。
確かに、今の俺にとってこの話は危険だし、決しておいしい話ではない。
俺は自分の理想生活の夢を叶えるために貯金をしてきた。
クラスメイトとはたまたま一緒のクラスになっただけだし、俺に無関心な奴らばかりだった。
俺は別にそれでよかったし、異世界に来て新たな生活を歩もうと思った。
だが、困ったときにだけ俺に頼るクラスメイト。
思考停止している奴には、ほとほとうんざりする。
俺は溜息を押し殺すように飲み物を一気に飲んで勢いよくジョッキを机にたたきつける。
だがそれでも―――――。
「わかったよ」
「え?」
「俺にできることならなんでもする。俺からお前に頼む形になれば別に大丈夫だ」
「……本当に?」
「あぁ」
「嘘じゃない?」
「あぁ、同級生のよしみだ。それに俺がここで動かなきゃシエスタに嫌われる気がする」
理由なんて、シエスタに嫌われて胸糞悪いモノが胸に残るのが嫌というものだけで十分だ。
パーティに加入して面倒事に巻き込まれるくらいならいっそ、ここで恩を売っといた方がいいだろう。
「……ありがとう」
花蓮は泣きながらその涙をぬぐい、ぐしゃぐしゃの顔のまま、ほっとしたように俺に笑いかける。
やっぱり女は笑っている方が可愛いな。
俺はそう思い席を立って、酒場の受付嬢に話をつけた。
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