第23話
緊張感のせいですぐに目覚める。
朝日もないので朝という感覚がない。
迷宮病という暗い迷宮内にずっといて体内時計がずれたせいで発病する船酔いのような症状が出る病にかからないように俺は職場から支給された錠剤を水と一緒に飲む。
ポールとムセンにおはようといった後、女性陣の着替えを待ってみんなで朝食をとる。
第三層へと向かう一行。
第三層は植物の魔物の発生区域だ。
植物性の魔物は再生速度がすさまじく国の迷宮で最も攻略に時間がかかった層なのだとか。
その理由はもちろんその数である。
「定期的に訪れて」そう言った後ポールは華麗な剣技で人食い植物の先端を斬る。
ザシュッと小気味よい音を鳴らして魔物は灰になって絶命する。
「こうして全部倒さないと意味ないからね、繁殖力はゴブリンの上を行くから」とポールはいいながら剣を収める。
視線を移すと、今度は大剣を「おらぁ!」と振り回すムセン。
魔物を討伐し終えた後、ムセンは不敵に笑って肩に大剣を担ぐ。
「だがまぁ、この階層が俺達、後始末担当の冒険者が一番おいしい思いができるんだけどな」
アリサは氷結魔法を使う。
俺はふと植物系魔物には炎系魔法じゃねぇのとおもった。
敵を倒し終えた後、アリサはその疑問に答える。
「炎魔法がいいとか、素人、特に異世界人は思うだろうけど、炎系魔法なんてこんな閉鎖空間でたくさん使ってしまえばそのうち一酸化炭素で死ぬし、派手な分、音もでかくて、周りや特に遺跡に傷がついてしまう可能性もあるの。特に植物系魔物だと進化したせいか体液が引火性の油になっているものも多い。確実に死滅させられるように氷結させた方が効率いいし安全なのよ」
俺はなるほどと呟く。
シエンは青白い壁で植物系魔物の鞭のような攻撃から俺を守り、カルナは弓ではなく、ナイフを両手に装備し、自分の身にからみつく魔物の体を断ち切って自身を守っているだけだった。
「私、出番ないから暇だわ」とカルナはため息を吐く。
そういいながらカルナはうごめく多数の植物系魔物の数を数える。
植物系魔物は数えるのが面倒だが、さすがエルフ、正確に数える。
こうして俺は第三階層の後始末を終える。
神官のシエンが魔力回復のポーションを飲んだ後に俺にやさしく声をかける。
「気持ちはわかりますよ。私も最初は戸惑いましたけど」
————私があなたを守りますから!
その頼もしい言葉に俺はどこか温かい気持ちになるのだった。
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