第19話

 迷宮の行方不明者の捜索および負傷した冒険者の仕事を引き受ける連絡が正式に来たのはそれから三日後の事だった。


 その仕事を行うのは通達到着後、つまり今日から二週間後。


 役所から正式に依頼されたB+ランクの冒険者数名と共に探索をして所定の書類に特定の事項について記入することが主に俺の仕事だった。


 仕事を終えて、シエスタにいうと、「そうなの!?」とたいそう驚いて、俺のことを心配して小声で辞表を書いちゃえばと誰もが考える選択肢を口に出す。


 「でも、今更この仕事やめてもなぁ」


 「誰にでもできる仕事をすればいいんじゃない?命は取られないわよ」


 「薬草探し、溝さらい、ペット探し、レジ打ち……とかいろいろ探してついでに八百屋のガウェインに買い物がてらちょっと聞いたけど、そういう仕事はもうほとんどこの時期誰がやるか決まっているらしいし。異世界人はほとんどが冒険者くらいにしかなれないそうだ。まぁ手に職を持っているなら話は別だけど」


 「今年は異世界転移者を大量召喚したせいで、失業の危険性を考えた現地住民が仕事をとっているのね……」


 シエスタは不満げな顔をしながら、エールを一口飲む。


 「まぁ、シエスタよりランクの高い冒険者に護衛されるし、最初は迷宮内の魔物の強さが低いところを中心に制圧しながら他の業者と連携しながらやるから、よほどの化け物が出ない限り大丈夫だって同僚が言っていた。怪我したら労災おりるってさ」


 「まぁ、ギルドも馬鹿じゃないから、そりゃそうするわよ……でも私は迷宮なんて人づてにしか知らないけど、魔物の強さは結構冒険者の報告基準だから、一般人からしたらものすごい体験するらしいわよ……心配だわ」


 俺はシエスタの顔を見る。


 「……そんな顔しないでよ、私までなんか悲しくなってくるじゃない」


 「ごめん」


 そういって俺はうつむく。


 シエスタが溜息を一つ漏らす。


 その後、相席から俺の横に座る。


 そうして俺の頭を優しくつかむ。


 「えっ……何を……?」


 「いいから、じっとして」


 俺は彼女に膝枕される。


 その後頭を優しく撫でられる。


 俺はどうしていいか沈黙する。


 「あんたは頑張っているし、今度も大丈夫よ、帰ったら私が思いっきり一緒に遊んであげるから」


 俺は沈黙する。


 「あんたはよく頑張っているわ……怖かったら逃げてもいいのよ」


 俺は家族にも言われたことのない優しい言葉と先行く不安に泣きそうになる。


 シエスタに酒場でハグされた後、俺は迷宮探索に同行することを決意する。


 一応念のため魔物の弱点とか覚えておいて俺は宿屋でぐっすりと眠った。


  

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