異世界迷宮の事後処理編。冒険という異世界のリアル
第20話
迷宮に入る。
地下一階。
やることはいろいろあった。
具体的には、冒険者が開けた宝箱のランク分け、宝箱の中身と開けた宝箱が一致しているかどうか、取り忘れがないかを確認した後に宝箱を回収する仕事である。
あとは、攻略済みの迷宮の遺跡探索の報告書に書かれたものの事実確認。
魔物の死体を集めて数を数えて選別し冒険者の報告と数が合致するかどうか確認する。
素材の剥ぎ忘れがあった場合や魔物の所持する武器防具の回収と瀕死の魔物にとどめを刺す仕事。
結構序盤の迷宮で、冒険者が恐怖心または慈悲の気持ちから殺しきれなかった魔物も存在する。
強いストレスを与えられた瀕死の魔物は突然変異したり、瀕死の魔物の血の臭いに群がった魔物が巣食う可能性も出てくるから、俺も瀕死のゴブリンと呼ばれる緑色の魔物の喉笛にナイフを突き刺す。
魔物は死んでから数分経って灰になって消滅したり魔石を残したり、稀に宝箱を発生させる。
そして最後に一番やりたくない仕事。
「これが今回の分です」
そういって台車に運ばれた三人の遺体。
俺は吐き気を堪えながらまず生きているかどうかを確認し、身元証明書である冒険者がつけているブローチの色とそれに刻印された名前を確認する。
俺は黙祷の後、着々と事務仕事をこなす。
身元のいない冒険者は冒険者自身が持っている冒険者カードに死後の扱いや遺品などの処分について希望が書かれており、もちろん種族ごとの埋葬方法などについても事細かくそれに記載されている。
俺は再度黙祷して確認の済んだ遺体を乗せた台車を見送るが、やはり強い吐き気に襲われる。
遺体を運んだのは特殊な訓練を受けたそういう役職の役人だ。
周りの冒険者にその役人について聞いたが、身分は決して高くないということだけはよく覚えている。
死因は地下一階の場合、ほとんど罠らしい。
「大丈夫か……っていうか初めてでしかも異世界人がこの任務にあたってよく吐かないな……立派だよ」
そういって青髪の精悍な金属鎧を身に纏ったイケメン剣士ポールに背中をさすられる。
「ど……どうも」
「はいこれ」
そういって気の強そうなピンク色のツインテール髪のアニメキャラみたいな声をしている魔法使いの女性のアリサが俺にポーションを渡す。
「これは吐き気止めの効果もあるわ。魔物にとどめを刺したり食べられる魔物の解体したときに大体役所の人は手を怪我するの、あんたも例外じゃないからそれも治しておきなさい」
「ありがとうございます」
「……お疲れ様です」
そういって銀色のショートヘアーで白い神官服のシエンという名の女性が声をかける。
今回の俺の護衛はこの三人だ。
三人で少し心もとない気がするが、あんまり人数が多いとかえって魔物に狙われる可能性が高い。
幸い遺体のなかに知っている顔はいなかった。
俺は第七階層まで調査しなければならない。
時間はいくらあっても足りないのだ。
俺は松明をつけたポールの後に続いて薄暗く不気味な階段から下へと降りた。
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