第5話
油身の多い現代なら高級なお肉がごろごろ入ったビーフシチューとかたいパンを腹いっぱい食べた後、宿屋を出る。
俺はポケットの中の小銭を数える。
八百屋が安いよ安いよと声を出している。
「そこの見慣れない服の兄ちゃん、リンギ買ってきなよ、リンギ!」
俺はちょうどよいのでリンギと呼ばれる細長い紫色の実を買う。
食べてみるときのこみたいな食感でしっかりと林檎みたいに甘い。
おもしろい果物だ。
「どうだ、うまいだろう」
俺は頷く。
「なんか困っていそうだな、兄ちゃん」
「そうみえますか?」
「おうよ、これも何かの縁だ、何でも聞いてくんな!」
「……僕は異世界人ですけど、この国で気をつけなきゃいけないことは?」
「あぁ……気をつけなきゃいけないこと……そうだな、値切り交渉はこの国ではあまりお勧めしない。チップを払ったほうがすんなり情報を出す奴の方が多い。あとはこの国は比較的国際的だからな、他の種族の見た目に驚いたりしないこと、あとは夜中に出歩かないこと、公共交通機関に旅人が乗ると大体スリに会う。靴と財布は死ぬ気で守れかな」
「ありがとうございます」
俺はさっそくチップを渡そうとするが、そのスキンヘッドの大男の八百屋はそれを断る仕草をしていった。
「あぁ、別にこれぐらい誰でも知っていることだからな、今後ともひいきにしてくれればいいぜ、暇な時期なら茶の一つでも飲みながらあんたの旅の話でも聞かせてくれよ」
「わかりました……じゃあついでにもう一つ、この国で仕事をもらうには酒場に行った方がいいですか?」
「酒場というと、冒険者か……憧れるのはわかるが、結構な金が最初にないと冒険者は厳しいぞ?」
「そうなんですか?」
「おうよ。冒険者登録料に、教会への寄付も毎月あるし、それだけじゃなく師匠の冒険者やギルドへの毎月の支払い。それにアイテムボックスからのアイテムをぱくったら捕まるからな。よほど腕が立たない限り辞めたほうがいい。まぁランクが上がれば一生安泰だが、ほとんどの奴らが挫折して傭兵になるさ。あんたの名前は?」
「リョウキです。いろいろとご親切にありがとうございます」
「おう、俺はガウェインっていうんだ。よろしくな!」
そうして俺は役所へと向かった。
道中、ついでに質屋でボールペンの価値をきいたら、参考にする値段がないので分からないといわれた。
世の中、そう都合よくいかないものだ。
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