第3話

 当たり前だが俺たち異世界人の身分は奴隷じゃない。


 仕事は何とか探そう。


 そうなると、問題はこの世界で何が手に入りにくいかだな。

 

 一番手に入れるのが難しいもの。


 この世界に魔物はいるのだろうか。


 そうであるなら、その図鑑があれば困ることはないだろう。


 「では、現在発見されている、幻獣・魔族・蛮族の生態の調査・研究結果をまとめられた図鑑をください」


 「ふむ、そうくるか……いいだろう、原本は無理だが、原本を模写した本のさらに模写ならば貴殿にやろう」


 「ありがたき幸せ」


 俺は広辞苑くらいの大きさの本を手に入れる。

 

 なかなかカッコいいデザインの本だった。


 次々と王に指名されるクラスメイト達。


 俺は今のところこの図鑑さえあれば いい。


 俺はそそくさと城を出る。


 教師に肩をつかまれて止められるが、俺は兵士に目配せしてその教師を引きはがしてもらう。


 「な、なにをするんだ、離せ!」


 「僕は好き勝手に楽をして魔族、ひいては魔王を討伐します。さようなら」


 「ま、まちなさい……私には教師としての義務が……それにたった一人じゃ何も……」

 

「いかなる立場にあれど、仲間になることを断られたならあきらめることだ」


 そう屈強な騎士にいわれた教師は俺に嫌味を言い放った。


 俺はそれを聞き流し、生徒同士でペアを組んでいるいつもの嫌な光景を最後に、高校生活を共にしたとさらばしたのだった。


 城を出たら真っ先に、城の近くで店をだしていた行商人から革のリュックサックを買い、それに図鑑を入れた。

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