第2話
高級なレッドカーペットの前に教師含めクラス全員31名が転移する。
「ようこそ来た、異世界の者よ」
いかにも国王といった感じの服装をした、茶色い髭の王冠をつけた逞しい王様がバカでかい声で歓迎の声をあげる。
「何だ……!?」男子生徒の一人が声をあげる。
「何なのよ……一体」女子生徒の一人が周りの女子生徒たちに状況の説明を求める。
やがてその動揺は俺以外のクラスメイト全員に広がる。
薄毛出っ歯猫背の担任教師が必死に落ち着きなさいと声をかける。
動揺はやがてパニックへと繋がっていく。
俺は別に動揺はせず、体育座りをしていた。
甲冑を着た屈強な騎士たちをみれば逃げられる状況でもない。
ここは静観しよう。
「落ち着くのだ、異世界人よ」
国王の威厳ある声によって全員が黙る。
一つ咳払いをして王は言った。
「我の名は第28代ギネン公国国王のギネン=アルシュ=シーザーである。貴殿らを呼んだのは他でもない。この国を魔王から救ってもらいたいのだ」
ざわめく生徒たち。
一人の生徒が「RPGゲームみたいだな」といって隣にいた男子生徒が、「みたいじゃなくてそうなんだろ?」
「静粛に!」
ギネン国王は一喝する。
「混乱するのはわかる、だが貴殿らを召喚したのにはこの国のためなのだ。だがいきなり無理だということは重々承知している。数日分の生活費と住民票、身分証明書を与え、さらに一つだけ何か特殊な力もしくはアイテムをやろう」
俺は黙ってどんなアイテムをもらうか考えた。
特殊な力、たぶんスキルの事だろうが、そんなのもらっても使いこなせずに死ぬのがおちだ。
だからできるだけ楽に生活できるようなアイテムが欲しい。
周囲を見たところ、中世……クラス転移したところを考えたところから察するに、よくあるネットのファンタジー小説によくある中世だな。
トイレと食事の質だけが気になるが、まぁそれはそれ。
教師が異議申し立てをする。
周りの生徒もそれに続いて騒ぐ。
騎士たちの瞳に一気に殺気が宿る。
馬鹿だなぁと思う。
今、相手の立場と自分の立場、どちらが上かどうか考えたらすぐにわかるだろうに。
「そこの異世界人よ、前へ!」
国王に呼ばれ、俺は最初に国王の前に膝まづく。
周りの男子生徒は笑い教師が勝手な行動はどうたらこうたら言っている。
だが、異世界に転移した以上、素直にこうするしか選択肢は残されていない。
「ほう、冷静にこの状況に対応できるとは見上げた若者だ」
「ギネン国王よりこの浅井良樹、その命をつつしんでお受けいたします」
「うむ。面を上げよ」
俺は面を上げる。
「貴殿は何がほしい?」
俺が一番欲しいもの―――――。
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