第12話 洞窟調査3

 扉の中は広い空間になっていて、ライトを照らしても奥まで届いていない。


「なんだか、怖いよ~、メアリィ~」


「もうっ、引っ付くんじゃないわよ。歩きにくいでしょ」


 床は平らで、所々に石の柱が伸びている。明らかに人工物だ。まだ誰も入ったことが無いのだろうか、床一面、埃と細かな砂で埋まっている。そこに私達の足跡だけが残る。


「メアリィよ。これはテーブルと椅子ではないか」


 一緒に入ってきたキイエ様が石の柱の近くで立ち止まる。天井のように見えていた物がテーブルの天板だと言う。


「ほれ、これなどは動かす事ができるぞ」


 4本の石の柱がズズズゥ~と同時に動いた。確かに巨大な椅子のように見える。


「ほんとだね。キイエなら座れそうだ」


「そうね、でもこれらは古いものだから崩れてしまうかもしれないわ。あまり触らない方がいいわね」


「それなら、このテーブルの上から周りを見てはどうじゃ」


 それはいい考えだわ。上から見渡した方が、全体が良く見えるわね。キイエ様に石のテーブルの上に乗せてもらい、周りをライトで照らしてみる。


「なるほど、確かにここは部屋のようね。それに全てが大きいわ」


 私達が小人になったように見えてしまう大きな部屋に、テーブル、椅子、家具が並んでいる。どれも埃を被っていて手付かずの状態だ。


「まるで巨人の部屋みたいだね」


 ユイトが言っているのが正解かも知れない。大昔に絶滅した巨人族がいたという話を聞いたことがある。昔の王都にも大きな城門があって、それは巨人族が通るために造られた門だと言っていた。


「キイエ様。この先も調査しましょう」


 キイエ様に床に降ろしてもらい先へと進むと、そこには別の部屋があり巨大なベッドのような物があった。やはり巨人族が住んでいた部屋のように見える。


 この部屋の見取り図を描いて、元いた部屋へと戻る。


「ねえ、メアリィ。さっきテーブルの上にフォークのような物があったよ」


「そうなの? それなら持ち帰りましょうか。キイエ様、取れますか」


「これかな」


 見せてもらったのは、巨人族が使っていた石のフォークの先端部分かしら。魔術師協会でちゃんと調べてもらわないと分からないけど、証拠品として持ち帰りましょう。


 すごいわ。私達で巨人族が暮らしていた部屋を発見できるなんて。

ある程度調査した後、ここの入口の扉をしっかりと閉めて、獣や魔獣が入らないようにしておく。

もう日も暮れかけている。今夜一晩はここで野営して、明日には王都へ帰りましょう。


「キイエ様のお陰ですね。あんな高い所の岩の隙間なんて、私達じゃ分からなかったもの」


「そうだね。キイエがいないとあの扉も動かせなかったしね。やっぱりキイエはすごいや」


「役にたてたのなら、それでいい。明日には王都に向かうんだな」


「ええ、早くみんなにこの大発見を知らせないと」


 全容は大規模な調査をしないと分からないでしょうけど、それは魔術師協会の方でするはずだわ。



 翌日から1日半かけて、私達は王都に戻って来た。まずは魔術師協会に行って報告をしないと。


「まあ、あなた達、早かったのね。それで調査は上手くいったのかしら」


「それがですね。洞窟の壁の奥に巨人族の部屋を発見したんですよ」


 私は得意顔で、協会の人に説明する。


「巨人族の部屋ですって! 本当なの」


「ええ、そこでこれを見つけてきました」


 調査した部屋の地図と、持ち帰ったフォークを見せる。


「確かに古い物のようね。少し調べてみるわね」


 後日、私達が持って帰ってきたフォークと、以前にこの洞窟で見つかったという土器の破片と比べると、同じような時代の物だという事が分かったそうだ。


 私達は魔術師協会に呼ばれて、第一発見者という名誉と共に増額の報酬を受け取る事ができた。

追加の報酬を渡してくれた職員さんが、興奮気味に私に言う。


「こんな大発見は何十年ぶりよ。これは早速調べに行かないといけないわね」


 歴史関係の部署は、地味な仕事が多くて魔術師協会でも日陰者だという。これで大々的に調査もでき、予算も増額できると喜んでいた。


 その後、軍も加わった本格的な調査が始まった。調査の結果、今は絶滅した巨人族の貴重な遺跡であることが判明し王都の街でも話題になった。


「メアリィ。遺跡の事について聞きたいって人が今日も沢山来ているわよ」


「いいわね、これで私達のお店の名前も世間に知られるようになるわ」


「そうね、お店始まって以来の大きな成果だもんね。これから依頼も沢山来るようになると思うわ」


 まだ借金は残っているけど頑張って働けば大丈夫。最初、シンシアと始めた小さなお店だけど、もっと大きなお店にしていきたいわ。これは私の夢だもの、頑張りましょう。

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