第15話 温かい秋の色

 それから、健人と早紀はすれ違う日々。この山奥の町は秋の色にすっかり変わり、健人は早紀と仲直りしたい気持ちである。でも、なかなか健人は早紀に謝るタイミングを見つけることが出来ない。

 今日も健人は小さい寺に向かう。

 特に参拝以外の目的はない。健人はとぼとぼと歩いている。小さい寺は、健人とおばあちゃんと早紀の三人であの頃に一緒に参拝していた。その時の記憶が薄れそうである健人。トンボが飛んでいる。トンボは何も語らない。

「あ」

「え?」

 たまたま小さい寺の前で健人と早紀がばったりと出会った。二人はお互いにちょっと気まずい感じである。二人は何も言わずに、小さい寺の敷地に入る。健人としては仲直りがしたい。早紀はどう思っているのか、健人はそう考えるも、まず謝ることにする。

「自分が悪かった、早紀、ごめん」

「私の方こそ、健人の大切なおばあちゃんの形見である外国の硬貨を失くして、ごめんなさい」

 小さい寺の前で、二人は仲直りをした。笑顔で二人は参拝、手を合わせる。小さい寺の敷地には、もうおばあちゃんは居ない。けれども、死んだおばあちゃんが見守っているような気がする、健人は温かい秋の色の自然な音の調べを感じる。

「早紀、一緒に歩いていかない?」

「いいよ。それとね、あ、やっぱりまだ言わない」

 うん? なんだろう?

 健人はそう考えるも、早紀と一緒に手をつないで山奥の町の秋の色の中に溶け込んで行った。

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