第14話 二人はすれ違う

 それから、健人は雨に打たれて家に帰った。惨めな気分で雨に濡れた衣服を乾かす。ひとり部屋に健人は何もかも考えたくないと思う。

 早紀にちょっと言い過ぎた。

 外国の貨幣を一枚失くしたぐらいで自分はどうかしている。

 健人は考える、おばあちゃんの形見の銀色の硬貨をそもそも貸したのが悪いことだと。

 次の日の朝に、健人は早紀とすれ違うが、早紀は何も反応せずに通り過ぎていった。トンボがいっぱい飛んでいる。この山奥の町は健人にとって幸せな町のはずだった。トンボは相変わらず飛んでいる。早紀に無視された気分で健人は焦りを覚える。いつもの散歩道で健人は早紀と笑顔で歩いているはずだ。でも、健人と早紀はすれ違う。

 どうしてそんなことを言ったのだろうか自分は。

 惨めな気分で健人はひとり参拝をした。

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