第13話 口げんか

 昨日に、健人は早紀に外国の銀色の硬貨を貸していた。それは言うまでもなく健人のおばあちゃんの形見である。

 今日も健人は早紀と会う約束をして、とある寺の前で待っている。トンボが飛んでいる。セミの鳴き声はもう聞こえない。

 早紀が待ち合わせ場所に来た。早紀の表情は暗そうな表情だった。

「早紀? どうしたの?」

「ごめんなさい、健人から借りている外国の銀色の硬貨をどこかに失くしたの」

「なんで?」

 健人と早紀は初めは軽い話し合いだが、そのうちに口げんかになる。

「早紀? あれは、死んだおばあちゃんの形見である外国の硬貨だぞ?」

「だから、さっきから謝っているけど?」

 健人と早紀は険悪な雰囲気になる。

 すると、雨が降り始めて早紀がどこかへと去っていく。ひとり健人は雨に打たれている。その時に健人はこう思った。

 早紀にちょっと言い過ぎた。

 ひとり残された健人は、しばらく雨に涙を溶かしていた。

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