第11話 理由

 健人の毎日は、やがて焦りに変わっていく。健人は無職である。街での仕事に心身ともに疲れて、この町に帰って来た。今の健人は自分に対して腹がたっている。いつまでもこういう生活なのかと。そう健人は思うのである。

 早紀からの電話。二人で町を歩かない? と。

 健人は早紀と手をつないで山奥である町を歩いている。

 そう言えば、自分が小さかった頃におばあちゃんと手をつないで歩いていた記憶がある。

 健人がそう思い出して、今は幼なじみの早紀と手をつないで歩いている。

 あの頃の三人のような安らぎは今はない。

 街での仕事が頭をよぎる。仕事での人間関係も。焦りの感情をなんとかして消したい健人。

 早紀が会話の流れを作る。

「健人は、これからどうしたいの?」

「え? なんの話?」

「だって、健人の表情が怖いよ?」

「ごめん」

「謝らなくてもいいよ? で、どうしたいの?」

 早紀の会話の流れを、健人はあまり良くは思っていない。けれども、どうしたら? と、健人は考えるのである。

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