第6話 現在に戻って。前に進めない

 健人は無職のままで、街でのあの頃の働いていたことを思い出しては、暗かった自分を客観視する。

 あのまま働いていたら、自分はきっと。

 部屋から出て、散歩をする健人。トンボが飛んでいる。遅れてのセミの声は聞こえない。開運の寺に向かう途中に、幼なじみの早紀と偶然出会った。

「どこに行くの?」

「開運の寺だけど? 一緒に行く?」

「うん」

 この山奥の町は田舎だ。町の入り口から出口までは歩けばけっこうな距離がある。

 健人は無職になってからというものの、以前のような自己肯定は下がったような感じである。なかなか前に進めない健人。けれども、幼なじみの早紀がとなりで一緒に歩いている。それについて健人は安心感を再確認するのだ。

 開運の寺に到着した。幼なじみの早紀と一緒にお賽銭を入れて手を合わせる。トンボが飛んでいる。健人は本当はわかっている。こんなことをしても、本当は願い事が叶うわけがないと。でも、今は幼なじみの早紀が居てくれている。それが楽しくて嬉しかった。

「早紀? 次はどこに行く?」

「ちょっと歩いて決めようか」

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