第224話 銀影の場合 ③



 街道を西へ向け移動中、天気は晴れている。


 俺と妖精、頭に花の生えた犬一匹、傍から見たらなんじゃこりゃ?


 というようなパーティー構成、ぶっちゃけ色物パーティーだな。


 もしここで魔物とエンカウントでもしたら、戦えるのは俺一人ぐらいだろう。


 そうならない様に祈るばかりである。


 「ふんふんふふ~ん、ふんふふ~ん。」


 「わんわんわわん。」


 妖精のフィリーと犬のはなまるは鼻歌を歌いながら、ご機嫌な様子だ。


 こいつ等、ホントは何も考えてなかったりして。


 まさかな。


 ここがセコンド大陸の南部である事は解った、街道をこのまま西へ取るとプロマロックの港町へ着くらしい。


  その更に南西へ行くと、この国の首都であるレダ王国の王都へ行けるだろう。


 俺のゲーム知識がまだ有効ならばだが、どうにも「ラングサーガ」と違う箇所があったりするんだよな。


 そんな訳で、油断は出来ん。


 装備の確認だ、接近戦用の雷の小太刀、投擲用のナイフが3本にクナイが10本。


 それらの装備品は革のホルダーに収まっている、いつでもイケるが油断はしない。


 足元を掬われる訳にはいかないからな、事は慎重に運ぼう。


 港町に着いたら、まずは情報収集だ。


 食事をして腹を満たしつつ、蜂蜜酒ミードを一杯。


 フィリーにも約束のさくらんぼのブランデー漬けをご馳走してやり、はなまるにも何か食わせないとな。


 酒場ってのは情報が集まるのが常識だ、人が沢山居れば情報もまた多い。


 まぁ、まずは町に着いてからだな。


 それまではひたすら歩く、警戒は怠らない。


 「むっ!?」


 モンスターの気配、早速お出ましだ。


 「フィリー、はなまる、気を付けろ、モンスターが居るぞ。」


 「えっ!? どこ?」


 「う~、わん!」


 はなまるは鼻が利くらしい、見つけた様だ。


 「あそこ、道の左側の草むらに、ゴブリンが3匹、それとホブゴブリンだな。」


 「ええ!? 4体も!? どうすんのよ!?」


 「どうするって、戦うに決まってるだろ。」


 「勝てるの? ゴブリンって何処にでも居る魔物だし、ホブゴブリンなんて強敵じゃない!」


 「まあでも、勝てない訳じゃないよ。俺一人で対処するから、お前等はここで待機な。」


 「なにカッコつけてんのよ! 危ないわよ!」


 「わん!」


 「じゃあ、フィリーはここで戦況を見てサポート、はなまるは隙を見てゴブリンの1体に噛みついてやれ。」


 「わ、分かったわ。やってみる。」


 「わん!」


 よっしゃ! それじゃあ一丁やってみますか!


 まずは敵の数を減らす、遠距離からの投擲で仕留める。


 クナイをホルダーから抜き、構えて狙いを定める。


 まだモンスター共はこちらに気付いてない。チャンスだな。


 ゴブリンの1体に向け投擲、クナイが頭に突き刺さり倒す。


 「よし! 次!」


 その間、ゴブリン共はこちらに気付き、向かって来る。


 「遅い! この距離は俺の距離だよ!」


 クナイをセット、投擲、2体目を倒す。


 更にこちらに向かって来るモンスターが、考え無に突っ込んでくる。


 「いい的だな。」


 ここではなまるがゴブリンの1体に向かってダッシュして行き、容赦なく噛みつく。


 「ぐるるるっ!! がうがう!!」


 おおっ、やるなぁはなまる。


 はなまるの頑張りに答えねば、俺は小太刀を抜き、ホブゴブリンへ接敵。


 ダッシュで距離を詰め、一気に首目掛け振り抜く。


 ホブゴブリンは断末魔を上げる事無く、頭が地面に転がる。


 残りはゴブリン1体、はなまるが噛みつき、動きを阻害している。


 「良くやった、後は任せろ。」


 はなまるは飛び退き、空間を空ける。その隙にとどめの一撃を喰らわす。


 「これで! 終わり!」


 最後のゴブリンを小太刀で仕留め、周りを見回し警戒。


 他にモンスターが居ない事を確かめる、はなまるも臭いで探っている。


 「わん。」


 「そうか、もうこの辺りにはモンスターは居ないか。」


 俺ははなまるの頭を撫でて労う。フィリーはポカ~ンとしていた。


 「終わったな、この辺りに魔物はもう居ない。」


 俺が言いながら撫でていると、はなまるは嬉しそうに尻尾を振って喜んでいた。


 「え!? もう終わったの?」


 「ああ、もう安全だと思うよ。」


 「よかった~、それにしてもあんた、結構やるじゃない! 見直しちゃったわ。」


 「まあな、これぐらいは大丈夫だ。」


 「後はスライムに掃除してもらえば、良いよね?」


 「ああ、スライムは別名「掃除屋」と呼ばれているからな。」


 「へ~え、ぎんかげってもしかして結構強い?」


 「おいおい、ゴブリン相手に遅れは取らん。それなりに鍛錬は積んでいるよ。」


 フィリーはフワフワと飛び回り、安心しきっている。


 まぁ、妖精に戦闘を任せる訳にはいかないからな。


 「よし、じゃあ先を急ごう。港町まであとどれくらいだ?」


 「もうすぐよ、今日一日で着くはずだわ。」


 ふーむ、夕方には到着か、順調なペースで移動出来ているって事だな。


 それとも、妖精のフィリーの案内が近道なのかな?


 どちらにしても、俺はまだ戦いに身を置く星の元にある事は違いない。


 ふーやれやれ、いつになったらスローライフが送れるのやら。


 まあ、当分はこんな感じで物事が動いていくんだろうな。


 まったく、ゆっくりしたいよ、ホント。



 

 


 


 


 

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