第223話 銀影の場合 ②


 俺と妖精のフィリーは集いの森を抜ける為、共に行動している。


 「ねえ、そのごっつい剣は何?」


 「ん? ああ、これか。これは聖剣サクシード………のレプリカだよ。」


 「レプリカ? 偽物って事? そんな物持ってて何の役に立つの?」


 「いやいや、これで中々切れ味が良いんだよ。普段使いにも良いし。」


 「ふーん、でもそんなの持ってたら誤解されて狙われるわよ。」


 「ふーむ、それもそうか。」


 アイテムボックスに仕舞っておこう。代わりに雷の小太刀を装備っと。


 ここは聖域だけあって、モンスターの気配が無い。


 魔物とのエンカウントが無いのは実にスムーズに行けるな。


 「なあフィリー、ここは聖域なんだろ、何かレアなアイテムはないものかな?」


 「うーん、そうねえ、あ! マナポーションの材料になる魔力草が群生しているところがあるわよ。」


 「なに!? それを早く言え。よーし、折角来たんだ、魔力草を採取していこう。錬金術師に売れば高く買い取ってくれるからな。」


 「お金は大事よね、私が案内するわ。付いて来て。」


 そう言ってフィリーはスイスイと低い高度で飛んで行き、案内してくれるらしい。


 ふーむ、魔力草か、あまり取り過ぎると問題だから、程々にしなくては。


 そして、案内された群生地に到着したのだが、先客が居た。


 「ワンワン。」


 なんか、地面を掘っている犬が居た。


 案内された魔力草の群生地には、犬以外居ないようだ。


 「犬が居るな。」


 「そうね、犬が居るわね。」


 「知り合いか?」


 「知らない。」


 ふーむ、見たところ人に害はなさそうだ。


 犬の頭のてっぺんに一輪の花が咲いている。


 花の生えた犬だ。


 「ワンワン。」


 「おー、良く懐くな。人を怖がらない犬だな。」


 「気に入られているみたいね。ぎんかげに。」


 「お、そうか? おーよしよし。」


 犬の頭を撫でてやると、犬は大層喜んだ。


 ふーむ、可愛いな。そういやあ俺、日本に居た時犬を飼っていたっけな。


 寿命で死に別れたけど。


 この犬は豆しば犬に似ているな、黒と白のコントラストが目立つ毛並みだ。


 ちっこい犬だ、人懐っこくて可愛い犬だ。


 「お前、名前はあるか?」


 「わんわん。」


 「そうか、無いか。じゃあ俺が名前を決めてやるよ。何がいいかな~。」


 豆しば犬は期待の眼差しをこちらに向けている。


 良い名前にしなくては可哀そうだ、ちゃんと考えよう。


 「ふーむ、よーし! 決まった! お前の名前は「はなまる」で決まりだ。」


 はなまるという名前を付けてやると、豆しば犬のはなまるは「ワンワン」と嬉しそうに返事をした。


 「よーしよし、はなまる。いい子だ、俺に付いて来るか?」


 「わん!」


 「おー元気な返事だ、よしよし、じゃあはなまる、一緒に旅をしよう。」


 「わん!」


 こうして、頭に花が生えている豆しば犬「はなまる」が仲間になった。


 こういう動物系の仲間は貴重だ、心が和む。


 良い仲間に巡り合えたな。


 「これからよろしくな、はなまる。」


 「わん!」


 「犬なんか連れて行くの? 世話はどうするの?」


 「そんなの俺がするよ、大丈夫。昔犬を飼っていた事があるから。」


 「しかも「はなまる」って、私に噛みつかないでよ。」


 「わん。」


 「あら、意外と頭が良いわね。賢い犬だわ。」


 うむ、フィリーとの相性も良いみたいだな。


 「よし、早速魔力草を採取していこう。」


 「分かったわ、私も手伝うから町に着いたらさくらんぼのブランデー漬けを楽しみにしてるわ。」


 「はいはい、じゃあちゃっちゃと済ませるか。」


 確かにここは魔力草の群生地だった、かなりの量の魔力草を採取した。


 その後、俺達二人と一匹は集いの森を抜けて、街道へ出た。


 「うーん、ようやくお日様の光が届くところへ出たか。」


 俺は伸びをし、身体をほぐしつつ辺りの様子を見る。


 道は東西に分かれている、これを西へ向かえばプロマロックの港町へ行けるか。


 「うーん、ようやく外に出られたわねー。」


 「わん。」


 フィリーも伸びをしている、はなまるは欠伸をしていた。


 「街道へ出たという事は、ここからはモンスターと遭遇する可能性があるから、気を引き締めて向かうぞ。」


 「おっけー、私の案内で安全な旅は保証されたわよ。」


 「くう~ん。」


 「どの口が言うか、まぁ魔物と遭遇したらお前等は後ろへ下がっていろ。俺がモンスターと戦って道を切り開くから。」


 「あらあら、頼もしい事で。頼んだわよ、ぎんかげ。」


 「わん!」


 どうせこいつ等は戦いの役に立たないだろうし、ここは俺が頑張らないとな。


 こうして俺達は、集いの森を抜け、街道沿いに進み、一路西へ進路を取った。


 目指すはプロマロックの港町、そこへ行って、兎に角情報を集めたいところだな。


 あの後、何が起きて、どう変わったのか、とか。


 時間の感覚が解らん、今はあの時から何時ぐらい時間が経ったのか。


 それを知る為にも、早いとこ人里へ向かわなくては。


 俺の予想が斜め上じゃなきゃいいが、こればかりは何とも言えない。


 みんなは無事だろうか? エストールは救われたのだろうか?


 そんな事ばかりが頭をぐるぐると巡る、大丈夫だとは思いたい。


 まぁ、情報を集めれば自ずと解る事だし、今はただ、進むのみ。


 「さくらんぼ~さくらんぼ~さくらんぼ~のブランデー漬け~。」


 「わんわんわわん。わんわわん。」


 「ホントにこいつ等は大丈夫なんだろうか?」


 ちょっと先行き不安になった。




 


 


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