第180話 伝承される戦い ①



 バルビロン要塞奪還作戦が遂に始まった。


その前哨戦となる、ガーゴイルゲートの戦いが既に始まっている。


要塞入り口を守る強固な扉、そこを突破しなくては前に進めない。


目の前にずらりと並んでいるモンスターの数は、およそ100。


いずれもゴブリンやオークといった醜悪な顔の魔物だ。


こちらは400の精鋭、四種族連合軍。人間、エルフ、ドワーフ、獣人、みんな強そうだ。


これなら勝てる気がしてくる、が、そう上手く事は運ばない。


ガーゴイルゲートの開閉装置は壁の内側にある。当然、モンスターが操作し、守りを固めているだろう。


先ずは、ゲート前の戦いを制しなければ、内側へ突入出来ない。


「ケイト! ゴブリンが行ったぞ!」


「任せて!」


「イズナ! オークを頼む!」


「解りました!」


マトック達、傭兵三人は良く連携が取れている。やるな、ケイトが敵をかく乱し、イズナとマトックがモンスターに切りかかり、モンスターの数を確実に減らしている。


よーし、こちらも!


「姐御! オークを!」


「了解!」


「ジャズ! そっちに二匹行ったわよ!」


「おう! ジュリアナは敵をかく乱!」


「解ってるわ!」


姉御が一刀のもとに、オークを両断し、ジュリアナが刺突武器でゴブリンを刺し貫き、俺はクナイを二つ投擲し、オークを同時に倒す。


「よし! いける!」


フルパワーコンタクトを使用している為、攻撃力は1.5倍。精神コマンドは今後何があるか解らないから、温存しておく。


俺の攻撃でも、モンスターは一撃で倒せる。少しずつ、だが、確実にモンスターの数を減らしている。


戦いはこちらが優勢、もうゲート前に居たモンスターはほぼ見当たらない。


バルク将軍が前線に出て来ていて、前線指揮を執っている。


「気を抜くなよ! まだ始まったばかりだぞ!」


「「「「「 おう! 」」」」」


皆、気合が入っている。しかし、ここでガーゴイルゲートが上へと開いた。


「来るぞ! 敵の増援だ!」


増援か、やはり来るか!


ゲートが開き、現れたモンスターは。


「ええーい! 何て数だ!」


「見ろ! オーガだ! オーガが出てきたぞ!」


無数のゴブリンに、オーク。それに一匹オーガまでいる。


ふむ、オーガか。体長3メートル程の筋骨隆々なモンスターだ。タフで手強い。


だが。


「それ!」


俺はナイフを投擲、狙いは頭部。距離も俺向き、威力十分。大丈夫、やれる。


投擲したナイフは、オーガの頭部にグサリと刺さり、一撃で倒す。


「よっしゃ、一丁あがり。」


「まったく、出鱈目な強さね。ジャズって。」


「姐御程じゃないですよ。」


「おお!? やはりお前だったか! ジャズ曹長!」


「は! バルク将軍もご健勝のようで。」


オーガを倒した事によって、こちらの士気が上がり、リース達アゲイン騎士団が馬による突撃を敢行した。


「我に続けー! ゲート開閉装置を奪うぞ!」


オーガを出した事により、ガーゴイルゲートは開いたままだった。そこへ騎馬隊による突撃。


戦場はゲート前から、中庭へと移りつつあった。


「おお!? リース殿達、やるなあ。」


リース騎士団は、モンスターを蹴散らしながら侵攻し、あっという間にゲート開閉装置を奪い取った。


「よーし! 装置は奪った! みな、死守せよ!」


「「 はは! 」」


騎士ゴートは、ナイトソードとナイトシールドで武装し、装置に近寄って来るモンスターを次々と切り払っていた。


アローナイトの騎士クリスは、弩のクロスボウで牽制射を放ちつつ、敵の数を減らしている。


リース殿は刺突武器のレイピアで、モンスターを各個撃破していた。


 バルク将軍が中庭へ進み出て、再び指揮を執り始める。


「よーし! ここまでは順調だ! ここからだぞ! 敵の増援が激しくなるのは、気を抜くなよ!」


「「「「「「 おおー-!! 」」」」」」


ふむ、ガーゴイルゲートの戦いはこちらが優勢になってきた。


モンスターの増援が心配だが、俺達の目的は要塞内部へと侵入し、宝物庫まで辿り着く事だ。


ここでの戦いに参加していては、時間が掛かって先へと進めない。


この場はバルク将軍とリース殿に任せて、俺達は内部へと続く入り口へ向かうか。


「姐御、ジュリアナさん、俺達は要塞内部へと行きましょう。」


「解ったわ、この場は四種族連合軍に任せるのね?」


「了解よ、ジャズ。行きましょう。」


俺達が要塞の中にある建物の入り口へ向かうところで、マトック達傭兵組も参加してきた。


「よう、ジャズ。調子いいみたいだな。」


「マトックか、そっちもここまで良く戦っていたな。」


「おうよ、このまま要塞内部へ突入して、宝物庫まで一気に駆け抜けようぜ!」


「解った。行こう!」


俺達と傭兵達6人は、急ぎ入り口へ走って行き、邪魔するモンスターを次々と薙ぎ払いながら進む。


流石にやるじゃないか、伊達に中級クラスじゃないな。傭兵達は。


特に凄まじいのは、イズナさんだ。あれはおそらくキルブレードだろう。


一撃必殺の刀、キルブレード。扱いが難しい武器だが、使いこなせれば頼りになる刀だ。


イズナは一刀のもと、オークを切り倒していた。


姉御の必殺技、兜割りも一撃でモンスターを倒していたが、二人で競う様に戦っていた。


「やりますね、貴女も。」


「そちらも、武器に頼らずよく戦っていますね。」


姉御とイズナはお互いに笑みを浮かべつつ、近寄って来るモンスターを切り伏せていた。


「ジャズんところの女は、みんな強いな。」


「マトックの方も大概だと思うがな。」


俺とマトックも、互いに二ヤリとしつつ、寄って来たモンスターを攻撃。倒す。


「あらあら、若いっていいわねえ。」


「へ? 貴女もまだまだ若いじゃない。」


「フフ、お互い頑張りましょうね。」


「私はいいんだけど、貴女よくそんな恰好で戦えるわね。脚を開いたら見えちゃうじゃない。」


「ウフフ、サービスよ。」


「誰得なんだか………。」


ジュリアナさんとケイトも、上手くやっているようだ。同じ盗賊同士、馬が合うんだろう。


 建物入り口を守っているオークが二匹、警護しているのが見えた。


俺は接敵し、ショートソードでオークの首を狩り、倒す。


マトックが走り込んできて、もう一匹のオークの腹に、ロングソードを突き入れていた。


「ち、ジャズみたいに一撃って訳にはいかないか。」


オークの腹から剣を抜き、オークの棍棒による反撃を躱して、マトックは更に水平切りを決める。


「ピギイイイイ………。」


オークの断末魔を聞き、建物入り口の護衛は居なくなった。


「よし! この場は片が付いた。要塞内部へ侵入する。みんな、警戒を厳に。」


「「「「「 了解! 」」」」」


 入り口の扉には鍵が掛かっていない、トラップの類も無さそうだ。


そのまま扉を開けて、入口近くの部屋を警戒しつつ様子を見る。


「物音は………しないな。」


「いけそうか? ジャズ。」


「ああ、問題無い。行ける。」


「なあ、突入する隊列はどうする?」


「俺と姐御が前衛、中衛にジュリアナさんとケイト、後衛の殿はマトックとイズナ。後ろからの敵増援を警戒しなくてはならないので、この隊列でいく。いいか?」


みんなに意見を聞いたが、みんな頷き、了解の意を示した。


「それでいいぜ、ジャズに従う。行こうぜ。」


「おう、ここまで来て死ぬなよ。」


「あったりめえだ。宝物庫までの道順は任せろ。」


「ああ、最初から当てにしている。案内を頼む。」


 最初の部屋を抜けて、通路へと出た俺達が目にしたのは。


「何だよ、この数。」


「うわっちゃあ~………………。」


それは、圧倒的なモンスターの数による、待ち伏せだった。
















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