第125話 レベルアップと卵かけご飯と

フィラとの別れを体験し、ジャズは心のどこかで寂しさを感じていた。

しかし、感傷に浸っている場合でもなく、事態は刻々と変化の兆しを見せ始める。

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 港町ハッサンから、クラッチの町へと帰還した俺達は、基地に戻り山賊から聞いた情報を隊長に話し、更にコジマ司令に報告する事になった。


その結果、事態は直ぐに動けないという事で、コジマ司令からは暫くの間待機と言い渡された。


 まあ、サスライガー伯爵と言えば、上級貴族。一筋縄ではいかないのであろう。相手は貴族、厄介な事になりそうだな。


おそらく、伯爵の屋敷へ家宅捜索するとなると、クラッチ駐屯地総出で出撃の可能性もある。


 コジマ司令が何か考えがあるかもしれないので、俺は気楽に構えて、小腹が空いたので女将さんの食事処へと足を運んだ。


「こんにちは、女将さん。」


「いらっしゃい、何にするんだい?」


このアットホームみたいな感じがいい。任務を忘れて食事に舌鼓を打ち、女将さんの手料理を食べたくなる。


「女将さん、何か簡単なモノでいいから。」


「簡単なもの? お茶漬けになっちゃうよ? いいのかい?」


ふーむ、お茶漬けか。わさび茶漬けはこの前食べたし、何か他のモノはないかな。


「他はないのかい?」


俺が訊くと、女将さんは「そうさねえ」と唸りながら、ポンと手を打ちメニューを告げる。


「だったら、卵かけご飯なんてあるよ。どうする?」


「お! じゃあそれ。卵かけご飯食べたい。」


「あいよ、ちょっと待ってておくれ、直ぐに準備するからね。」


そう言って、女将さんは料理を始めた。卵かけご飯か。いいな、やはり醤油が決め手だろうな。


女将さんが飯を作っている間、そういやあ経験点が溜っていた事を思い出す。


(よーし、レベルアップでもしとくか。)


俺はステータスを見る。おお、経験点が4200点もあるぞ。一気にレベルが上げられるな。


上級職になると、レベルアップに必要な経験点も増える。一つレベルを上げるのに1500点必要なようだ。


よーし、早速レベルを二つ上げられるな、………よしよし、レベルが22になった。HPも66になったぞ。


これで少しは打たれ強くなったよな。後はスキルポイントだ、レベルアップしたから、その分ポイントが上乗せされている。73ポイントもある。


さあて、何に使うかな。上級スキルを習得するのもいいかもな。それとも超級スキルの方がいいかな?


戦闘開始時に気力が上昇するスキルがある、必殺技を使うには気力が130以上無いと使えない技もあるし、ここは一つ、「闘争心」のスキルを習得しとこう。


闘争心はスキルレベル1で気力がプラス5される。超級スキルの為、レベル1で10ポイント必要だが、初めから気力が溜っている状態は戦闘を有利に運べるので、習得しておいて損はない。


よーし、「闘争心」を習得しよう、スキルレベルは3まで上げられるな。


よしよし、闘争心レベル3まで習得したぞ。ポイントを60使ったけれど、これで戦闘開始時に気力がプラス15されている筈だ。


残りのスキルポイントは13だ、これは今後の為に取っておこう。


ふむ、大体こんな感じか。ステータスをチェックしよう。



ジャズ  LV22  HP66

職業  忍者

クラス  マスター忍者


筋力 230  体力 200  敏捷 250

器用 200  魔力  95  幸運 190


ユニークスキル

・メニューコマンド

・精神コマンド  9/9(必中 不屈 熱血 気合 魂)

・エース


スキル

・ストレングスLV5  (フルパワーコンタクト)

・タフネスLV5

・スピードLV5

・投擲

・剣術LV5  (ブレイジングロード)

・身体能力極強化

・全属性耐性LV5

・見切り

・インファイトLV5

・指揮官

・闘争心LV3



経験点1200点  ショップポイント5200  スキルポイント13


武器熟練度  小剣 180  剣 280  槍 35



 こんな感じになった、よしよし、大分いい感じになってきたな。いやまだまだか。


おや? 精神コマンドに新たに「魂」が使える様になっているぞ。


「魂」は攻撃力が一度だけ3倍になる、とっておきの奥の手だ。まさに切り札になるな。


それにしても、俺もいよいよスキルが多くなってきたな。うむ、いい傾向だ。この調子でどんどん行こう。


ヒットポイントも66になった事だし、打たれ強くなった事は確かだ。


能力値もとんでもない事になってきたし、流石エーススキル。レベルアップ時の上昇率も段違いだな。


よしよし、こんなもんか。


丁度そこへ、女将さんから料理が運ばれて来た。美味そうだ。


熱々のご飯に生卵が掛けられていて、醤油が気持ち掛けてある。鰹節もいい感じに降りかかっていて、いい匂いがする。


箸を使ってよくかき混ぜ、全体に卵色が広がってきた所で、早速いただく。


「頂きます。」


両手を合わせ、箸を持ち、卵かけご飯を一口、口の中に放り込む。


「あつ、あちち、はふはふ、ほふほふ、うう~~ん。旨い。」


炊き立てのご飯に、卵が絡まって実にいい旨味が口いっぱいに広がる。


(うむ、どこか懐かしい味だ。やはり卵かけご飯は最高だな。)


醤油と鰹節が絡まり、日本人なら涙ものの感動が、口一杯に広がる。


「ご馳走様でした。」


あっという間に完食し、両手を合わせてご馳走様をする。


「女将さん、旨かったよ。また食いにくるよ。」


「それはいいけど、あんた、あの子はどうしたんだい? 姿が見えないけど。」


「ああ、フィラの事? あの子は昨日セコンド大陸へ向けて旅立ったよ。」


「おや? そうなのかい。折角常連さんになってくれたのに、寂しいねえ。」


確かに、フィラが居ないと、何処か心にぽっかりと穴が開いた様な感覚がしてくる。


だが、また会えると信じて、俺はフィラの行く末を楽しみにしている。


きっとフィラは、凄い戦士になるだろう。俺も負けていられない。鍛錬あるのみだな。


「女将さん、ご馳走様、また来るよ。」


「はいよ、まいどあり~。」


女将さんの声を背に、引き戸を引き、外へと出る。今日も日差しが緩やかに辺りの町中を照らしている。


「ふう~~、食った食った。さて、基地に戻るとしますか。」


ゆっくりと歩きながら、クラッチ駐屯地までの道を、あちこち見回しながら、基地に帰る。


「もうすっかり秋だな。」


鈴虫が鳴き、陽の光とは対象に、頬を撫でる冷たい風が、季節の変わり目を伝えている。


「………領主サスライガー伯爵か。」


山賊の男は、領主は悪徳領主と言っていた。だが、その領主の側近っぽい女海賊のちびっ子は、いい奴だと言っていた。


「どちらが正しいのかな? よう解らん。」


今後、間違いなく領主の事で一悶着あるだろうと予想できるので、軍がどう動くのか。


自分でも解らない以上、コジマ司令に任せた方がいいよなと思い、歩き出す。


「どうなっちまうのかねえ。この町。」




















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