第123話 女海賊団、ドクロのリリー ⑥


 ニールと合流する為、港町ハッサンの広場へと向かった。そこにはニールが待っていた。


「よう、ニール。そっちの首尾はそうだ?」


「ああ、まあまあ、ってとこだな。」


うん? 随分と歯切れが悪いじゃねえか。何かあったのか?


「ニール、詳しく話せ。何があった?」


よく見ると、ニールはあちこちボロボロで、山賊達と一戦交えた後、といった様子だった。


「えーとな、一応海賊のアジトらしき所までは解った。そこまでは後をつけて行ったからな。でだ、そこでこの町の衛兵が後からやって来て、山賊たちと一戦交え始めた、んで、俺もその戦いに参加して、10人は倒したかな? その時にはもう、隊長達は何処かへと連れ去られていった後だったんだ。」


ふーむ、そうか、この町の衛兵が仕事をしたって訳なんだな。そこへニールが加勢したという事か。


「衛兵と一緒とはいえ、10人の山賊と戦って生き残るとは、お前も成長しているんだな。」


「へっへっへ、まあな、で、海賊のアジトの場所は特定できた。ここから海岸へ行って、海岸沿いを進んで行くと、入り江があるんだ。そこへ皆入って行ったよ。俺はお前にこの情報を伝える為にここまで戻って待機していたってところだ。」


「そうか、よくやったなニール。この先に入り江があるんだな? 解った。後は俺に任せろ。」


「待てよ!? 一人で行くつもりか? 俺も行くに決まってんだろうが。」


「そんなボロボロの状態でどうする? いいから、俺に任しとけって。な。」


「………解ったよ、お前の強さは解っているが。なあ、お前一体何者なんだ?」


ふむ、何者か? ときたか。ニールには喋ってもいいかな。戦友だし。


「ニール、ここだけの話にして欲しいんだが、俺、上級クラスのマスター忍者にクラスアップしたんだ、だから、多分山賊の50や100は相手に出来ると思う。まあ、任せろ。な。」


ニールは顎に手を添えて、考え込んでから口を開いた。


「大丈夫なんだな? お前一人で? まったく、お前って奴は、抜け駆けしやがって。上級職ってなんだよ。またお前に先を越されたって事かよ。着いていけねえよ。正直。」


「はっはっは、そう悲観するな。お前だって中々戦える様になってきたじゃねえか。その調子でいけばお前も中級クラスぐらいはクラスアップ出来ると思うぜ。諦めんなよ。」


「本当かよ、まあ、気長にやっていくさ。」


 よーし! この先の入り江だな。そこに隊長達が連れて行かれたんだな。おそらく見張りぐらいは居るだろう。


静かに対処するには、やはり隠密行動に特化した装備に着替える必要がありそうだ。


隊長とフィラ、それとあのちびっ子の装備武器を回収して、アイテムボックスに入れる。


「じゃあニール、行って来る。」


「おう! 気を付けろよな。ジャズ。」


ニールと別れ、海岸へ向かう。その途中、衛兵と山賊の死体が幾つか転がっていたので、両手を合わせて合掌する。


(ここで戦いがあったんだな。)


という事は、このまま進んで行けば、入り江に到着するって事か。


 俺は岩陰に潜み、冒険者装備の忍者セットに着替える。ついでだ、銀仮面も装備しておこう。暗所での戦いになる可能性がありそうだ。


「よし! 準備完了。後は、そうだな。大勢の敵と戦うんだから、何か魔法のスクロールを買っておこう。」


 俺はショップコマンドを使い、雷属性攻撃の範囲攻撃魔法が封じられた、サンダーストームの巻物を購入し、アイテムボックスに送られてきている事を確認した。


(よーし、これで何とかなるかな?)


銀仮面で素性も隠したし、このまま行こう。海岸沿いに進み、入り江が近づいて来たところで、居た! 見張りだ。


(歩哨は三人か。)


山賊の増援が100人として、俺とニールで30人倒し、海岸でニールと衛兵が10人倒したと言っていた。


残りは60人強といったところか。………いけるな。多分。


懐からクナイを取り出し、構えて、三人同時に狙いを付けて、連続で投擲する。


「う!?」「ぐわ!?」「ふぐう!?」


よし、三人同時に倒した。音も無かった筈だ。これでアジトの入り口は確保したな。


忍び足で入り江の中まで進み、辺りを調べる。船着き場っぽい感じになっているあたり、海賊のアジトで間違いなさそうだ。


 海賊船が一隻と、他に木箱が幾つか、ロープにランプ、棚には食料品が並んでいる。タルには水が入っている。


(ここに山賊は居ないな。)


奥の方に洞窟らしき横穴が空いている、おそらくこの先に続いているであろう通路に、皆が居ると思う。


(よし、早速行ってみよう。)


忍び足で音を出さずに進んでいき、洞窟内なので銀仮面を使い、暗視モードにしておく。


(おお、よく見える。やっぱりこれ、高性能だな。)


銀仮面の性能を頼りに、更に奥へと進んで行く。すると、間も無く大きな広い場所に出た。


(妙に明るいな? ランプなんかで明かりを灯しているのかな?)


壁際に背を付け、広場になっている洞窟の方を、見つからない様にそっと覗き込む。


そこには、山賊がおよそ60人程と、隅っこの方に女性たちがロープで括りつけられていた。


(よかった、隊長達は皆無事みたいだな。)


しかし、捕まっている事は変わりない。何とか救出しなくては。


それにしても、妙に明るいと思ったらやはり金鉱脈らしい。ランプや松明の明かりが金の部分に乱反射しているらしく、明るい。


よく見ると、フィラはロープから抜け出したのか、隊長とちびっ子の間に割って入る様に立ち塞がり、山賊の頭目のメルヘンと対峙していた。


「へっへっへ、中々やるじゃねえか。だがここまでだ、ああ~~、武器も持たない女を痛ぶるのは気分がいいぜ。へっへっへっへ。」


「くっ、卑劣な!」


うーむ、流石のフィラでも、この状況は分が悪い様だ。黙って見ている訳にはいかないな。


俺は魔法のスクロールの「サンダーストーム」の巻物を取り出し、いつでも使える様に腰ベルトに差し込み、武器を構える。


そして、山賊達の後ろから大声で注意を向けさせる。


「そこまでだ!!」


「だ、誰だ!?」


俺はゆっくりと進み出て、姿を現し、前口上を言う。


「闇を照らすは銀の仮面! 正義を照らす光なり!」


 俺の前口上によって、山賊達が一斉にこちらを向く。そこで、何やらサキ隊長が「ま、まさか!?」という声が聞こえた。


「この世を乱す無法者め! シルバー忍法が許さん!」


ここで足に力を加えて、ムーンサルトジャンプを決める。滞空時間の長いジャンプをして、アイテムボックスから幾つかのクナイや手裏剣を取り出す。


「宙を舞い! 悪を討つ! 必殺手裏剣、乱れ撃ち!」


放物線上の一番高い所から、手裏剣を乱れ撃つ。これでほぼ半数の山賊を倒す。


まだジャンプ中の為、ここで「サンダーストーム」の巻物を使用する。


「嵐呼ぶ! 稲妻に! 運命さだめの刃が今宵も光る!」


「サンダーストーム」の巻物を使い、物凄い稲妻と共に、範囲攻撃魔法の範囲に入っている山賊を、一網打尽にする。


「力の限りに! (フルパワーコンタクト)熱い心で! (熱血)命を懸ける! (必中)」


フィラとメルヘンの間に割って入る様に着地して、雷の小太刀を構える。


「我が名は銀影! 仮面の忍者、銀影! 只今、見・参!!!」


見参、のセリフと同時に、メルヘンに向かい、パワースラッシュをかます。


「て、てめえ!!??」


山賊の頭目のメルヘンは、横に真っ二つになり、そのまま絶命した。


「やはり! やはり来てくれましたね! 銀影様!」


何やらサキ隊長が興奮している様だが、ここは気にしない様にしておく。


よーし! 山賊団を壊滅させたな。もう立っている山賊は居ない。人質も全員無事みたいだ。


女性陣のロープを切って、自由にする。その間、サキ隊長が声を掛けてきた。


「あの、銀影様。ここへはどうして?」


ふむ、ここは銀影として対応した方がいいよな。


「拙者は、この辺りにあると言われていた金鉱脈に、領主が関わっているという情報が本当か、確かめに来た次第でござる。」


「え!? 金鉱脈?」


それとなく、情報は渡したし、ここはもうお暇しよう。


「それでは、アリシアの方、拙者はこれにて、御免!」


ダッシュでこの場を後にする。これ以上ここに居たら、おそらくサキ隊長に怪しまれる。早々に退散しとこう。


「ああ、銀影様、また言いそびれてしましましたわ。………お礼を。必ず見つけますわ。銀影様。」



{大山賊団を壊滅させました}

{ボーナス経験点1000点獲得しました}


{シナリオをクリアしました}

{経験点2000点獲得しました}


{ショップポイント1000ポイント獲得しました}

{スキルポイント5ポイント獲得しました}



おや? いつもの女性の声とファンファーレが聞こえてきた。そうか、シナリオをクリアしたらしい。


ふ~やれやれ、今回も何とかなったか。これで一先ずは安心だな。よかったよかった。今回はちょっと疲れたよ。


 それにしても、俺一人で60人を相手に出来るとは、比較的弱い山賊とはいえ、俺もいよいよ変人じみてきたな。


さて、後はニールの所に戻って、またここへ入って隊長たちを迎えにこよう。


領主が云々うんぬんの話は、サキ隊長とコジマ司令に任せておこう。まずはお疲れ、俺。


俺は後を付けられない様に、足早にこの場を離脱したのだった。












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