第77話 王都アリシアの後日談



 「お家騒動」から翌日、あいにくの雨が降っていた。


まだ小雨なので幾らかはマシってところか。


アリシア王国国王トーフ陛下と、第二王子アロダントの国葬が行われた。


皆、沈黙をしつつ陛下が乗った馬車が沿道の大通りをゆく。


 その後に続いてアロダント第二王子の棺の馬車も続く、その後に王族や貴族達の乗った馬車が列を作り、ゆっくりと女神教会へ向け、移動していった。


サキ小隊も一応アリシア王国軍人なので、沿道から陛下達の馬車をお見送りした。


敬礼して、王族の馬車が通り過ぎるまでの間、沈黙し、見送った。


その後直ぐ、街の皆は酒場や家に行き、呑んでいる様子だった。


 ダイサーク様の計らいで、葬儀の後、「降臨祭」を開くよう、住民に言い、お見送りした者から順にお祭りに参加していった。


 王都は大いに盛り上がり、飲んで、歌って、騒いで、踊って、城の酒蔵も解放され、皆、大いに飲んで、明るく王様や第二王子を弔っていた。


俺達サキ小隊はまだ任務中という事で、祭りの参加は見送られた。


 折角の王都見物も出来ず、お祭りにも参加出来ず、サキ隊長は真面目な人なんだなと、改めて知った。


「いいか! クラッチ駐屯地に帰るまでが任務だからな! 最後まで気合入れろよ!」


「「 はい! 」」


 こうして、モー商会の荷馬車に乗り込み、大通りとは別の道から、壁門まで移動し、王都を出ようと荷馬車は進む。


街の様子は兎に角明るかった。皆酒を飲み、楽しそうにお祭りをしていた。


 そこかしこで飲み、何かの歌を歌っている、それを横目に、俺達サキ小隊は荷馬車を転がす。


「あ~あ、お祭り、参加したかったな~。」


「諦めろよニール、任務も無事に終わらせる為だよ、こういうのもさ。」


「そこ、無駄口を叩くなよ、私だって辛いんだ。だが、急いで帰らなければならん、コジマ司令に報告しないとならないんだよ、私は。」


「それは解りますが、少しぐらいいいじゃないですか隊長。」


「ニール二等兵、我々は軍人なんだ、楽しむよりもまず先に、任務を完遂しなければならんのでな。すまんとは思うが、これも仕事だ。荷馬車の操縦に専念してくれ。」


「はい。」


 王都の壁門までやって来た、そこで門衛に隊長が対応して、王都を出発しようとした時だった、一人の男が近づいて来た。


「よーう、もう帰るのか?」


「なんだ、ドニか、何か用か?」


「周りはお祭りだってのに、軍人さんは大変だな。」


「まあな、これも仕事だよ。それだけか?」


「ああ、そうだった、ダイサーク様から伝言だ、「この国を救った英雄達よ、感謝する」、だ、そうだ。」


「そうか、ダイサーク様がそんな事を、解った、伝言は確かに受け取った。」


「じゃあな、俺はもう酒が飲みたくて仕方が無いんだ。あばよ軍人さん。」


 そう言って、ドニは街の雑踏に紛れ、姿を消した。こういう所はホント「盗賊、シーフ」なんだな。


壁門も通過し、街道を西へ向けて荷馬車は進む。


不思議とクラッチに帰る途中、モンスターに遭遇する事は無かった。


街道を進んでいる最中、ニールがこんな事を聞いて来た。


「結局さ、今回の事って、一体何だったんだろうな?」


「何言ってんだニール、そんなの「お家騒動」に決まってんじゃねえか。何を今更。」


「う~ん、そうなのかな? それにしちゃ何か、きな臭い感じじゃなかったか?」


「ふーむ、………きな臭いねえ、隊長はどう思います?」


サキ隊長に聞いてみたが、隊長は何か思案気に「うーん」と唸っていた。


そして、こう返してきた。


「私には解らんが、確かに、裏でなにやら色々やっていた者がいるのやもしれんな。」


「え? そうなのですか?」


「ああ、シャイニングナイツのマーテル殿が対処してくれたお陰で、何とか事を収める事が出来た。っといった様子ではあると思うがな。」


(ふーむ、俺の知らない所で、なんか色々あったという事か。まあ、俺みたいな只の雑魚一般兵に出来る事などたかが知れているだろう。)


 こうして、今回の任務も無事に遂行する事ができそうではあるが、確かに、ニールの言う様にきな臭いってのは、あったかもしれない。


 闇の崇拝者のマグマがアロダント第二王子と一緒に玉座の間に居た時点で、確かに「何かやってんな」とは思うが、さて、ちょっと想像が付かんな。


 そして、クラッチの町に到着したサキ小隊は、モー商会に荷馬車を返却し、基地に帰還した。


何事も無く、モンスターとの遭遇も無く、比較的安全な帰り道であった。


いつの間にか、雨は上がっていて、虹がかかっていた。今日も町は平和であった。



  王都アリシア  玉座の間――――



  この日、一人の少女が載冠の儀を終え、謁見の間をスタスタと歩きながら、玉座へ向けて歩いていた。


少女の他に、王族や貴族達、将軍達もいて、謁見の間は人で一杯だった。


そこには、第一王女カタリナの姿もあった。


少女は玉座に座り、開口一番、こう発言した。


「私には兄が一人居ます。名前はジャズー、生きていれば19歳前後、探し出して見つけだし、ここへ連れてきた者に、金貨5枚を差し上げます。この言葉を流布して下さい。頼みますよ。」


「「「「「「「「 御意。 」」」」」」」」


少女の頭上には「プリンセスクラウン」が納まっていた。














************************************************

第1部   完

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