第65話 アリシア動乱 ④
王都アリシア 王城 とある部屋――――
妙に暗く、そして薄気味の悪い空気を纏わせながら、王城の一室の部屋にその男は居た。
名はマグマと言い、闇の崇拝者の一人である。
マグマは窓の外を眺め、王都全体が一望できる景色を、顔をしかめて見ていた。
「やはり、アロダントは動かんか。今動かねば取り返しが付かんのだがな。」
マグマは一人、呟きながら景色を見て、思考していた。
「ダイサークを何とかしなければならんと言うのに、アロダントめ、悠長に構えおって。」
マグマは顎に手をやり、これからの計画をどう進めていくかを考えている。
そこで、誰も居ない所に向け、声を発した。
「ナンバーエイト、居るか?」
マグマが言うと、スッと物陰から一人の男が姿を現した。
「ナンバーエイト」と呼ばれた男は、マグマに対し
「エイト、ここに。」
「うむ、エイト、お前はアロダントの「計画」に便乗し、隙あらばダイサークを始末せよ。」
エイトは顔を上げた。
「よろしいのですか? 「契約違反」になりますが?」
エイトの意見に、マグマはギロリと両の
「道具が意見か?」
「いえ、只………。」
エイトは言い淀み、しかしマグマに向かい言葉を発した。
「ナインからの音信が途絶えました。おそらく、何者かの手により、葬られたかと。」
「ナインがか? 誰にやられた?」
「解りません、仮面を着けた者に倒されたという目撃情報がある位です。」
「フン、確かナインは「ブーンファミリー」に潜伏しておった筈であったな。まあいい、誰にやられたにせよ、相手が
「如何致しますか?」
「捨て置け、もうクラッチに用は無い。」
「はい、では、行動を開始します。」
そう言いながら、エイトは音も立てずに静かに部屋を出て行った。
マグマは更に、「ナンバーズ」を呼ぶ。
「セブンは居るか?」
しかし、返事は無い。
「そうか、この大陸ではなかったな、「シックス」から「ワン」までは確か、セコンド大陸だったな。フン、まあいい。使える道具は他にも居る。アロダントの私兵も場合によっては役に立つやもしれん。」
マグマは一人、窓の外を眺め、呟く。
「さて、どうなる、この一手。」
クラッチの町――――
荷馬車護衛の任務を受けたんだけど、サキ小隊だけなのかな?
ちょっと少なくないか? まあ、危険が少ないと判断されたのかもな。
「なあニール、任務内容ってどうなってる?」
ニールの荷物をアイテムボックスに入れながら、聞いてみた。
「ああ、そうだった。忘れる所だった。お前に伝えておけって言われていたんだった。」
「よし、聞こうか、何だ?」
「まず俺達は、基地の出入り口に集合、その後町の中にあるモー商会まで出向いて、荷馬車を受け取る。で、外へ出て街道を東へ向けて移動し、王都を目指す。以上だ。」
「おう、解った。………なあ、俺達だけか?」
「ああ、そう聞いてる。何でもモー商会の連中も休みに入っているらしくてな、働く人が居ないんだってさ。一応俺が荷馬車の御者をする事になったからな。護衛の方は頼むぞジャズ。」
「え? 御者もお前がやるの? 大丈夫か?」
「おいおい、俺は村出身だぜ、荷馬車の操縦ぐらい出来るぜ。」
へー、ニールの奴、以外な一面があったんだな。
それにしても、モー商会ってのは軍に依頼を出来る程、顔が広いのか? 中々手広くやってるな。
こちらの準備は整い、基地の集合場所で待っていると、サキ少尉がやって来た。
「よーし、集まったな。いいか! 雨天だろうが任務は任務だ! 荷馬車護衛、気合入れろよ!」
「「 は! 」」
こうして、クラッチの町中を歩き、商店街の方へ向けて移動した。
雨はまだ止まない。結構降るな、王都までどれくらいの距離だろうか、隊長に聞いてみるか。
「隊長、王都までの距離はどれ位掛かりますか?」
「徒歩なら三日、馬なら一日半、馬車だと、そうだな、二日くらいだ。」
二日間か、食料も持っているし、水筒もある。
忘れ物はないよな、よし、大丈夫だ、問題ない。
しばらく町中を歩いていると、ニールが声を上げた。どうやら目的のモー商会に着いたみたいだな。
「ここです隊長、モー商会です。」
「よし、私が先方と話す、お前達は外で待機、必要なら荷物を荷台に乗せる手伝いをしておけ。」
「「 はい。 」」
ここがモー商会か、結構大きな店だな。
聞いた話によると、中々手広くやっている商会らしい。
日用雑貨から奴隷商まで、幅広くやっているって、ニールが言っていた。
噂では領主の伯爵とも太いパイプがあるらしい、いやはや、金ってのはある所にはある物なんだな。
軍を除隊したら雇って貰えるかな?
サキ少尉がモー商会の人と接触していて、何かの話をしている様だ。
ニールと二人、ここで大人しく待っていると、雨が少し止み始めた。
ふう~~、このまま雨に当たり続けると風邪を引くかもしれんからな。雨が上がってよかった。
しばらく待機していると、サキ少尉がこちらに戻って来た。
「よし、先方と話は終わった、荷馬車を護衛するだけでいいらしい。代金は既に受け取っているらしいから、王都へと護送し、荷物を受取人に渡して任務完了となる。いいか! 気合入れろよお前等!」
「「 は! 」」
こうして、モー商会から荷馬車を受け取り、ニールとサキ少尉が御者台に乗り込み、自分は荷台へと乗り込む。
一応自分の座る場所はあるので、座りながらの旅になりそうだ。
モー商会の人から「お気をつけて」と言われ、送り出してもらいながら、荷馬車はクラッチの町中を進む。
一応護衛なので、ここから警戒をする事になる、町の中ではあるが、油断は出来ないという事だ。
町の外へと繋がる壁門まで来た。門番に説明し、サキ小隊は一路、王都目指して荷馬車を進める。
街道を東へと進み、辺りをくまなく見渡しながら、警戒をしつつ荷馬車の護衛をしていく。
しばらく進んでいくと、また雨が降り始めた。今度はポツポツとした小雨だ。
既に外套を身に着けているので、このまま進む。
特にこれと言って変化は無い。静かなものだ。モンスターの気配も無い。
比較的安全な任務になっている感じだな。まあ、油断は禁物だが。
王都へ行くのは初めてだ、ニールも初めて王都へ行くと言っていた。
ちょっと気になったので、サキ隊長に聞いてみた。
「隊長、モー商会の護衛依頼との事ですが、荷物受取人もモー商会の人なのでしょうか?」
「いや、王都側の受取人はアロダント第二王子の使いの者らしい。王族とも関係があるなど、モー商会も侮れんな。」
(何!? アロダント第二王子の使いだと!)
それを聞いて、少し不安に陥った。コジマ司令から義勇軍としての任務を言い渡されている。
アロダント第二王子をそれとなく調べろ、という任務だ。
ふーむ、これは何かの偶然かな? ちょっと聞いてみるか。
「隊長、モー商会というのは、王都にも顔が利くのですか?」
「ああ、モー商会は王都に本店がある大きな商会だ。アリシアの国中の町や村にそれぞれ支店がある。王国軍に武具を卸しているのも、確かモー商会だったと思ったが、ジャズ上等兵、何か問題か?」
「いえ、ただちょっと、気になっただけです。」
ふーむ、モー商会は王都にも顔が利くという事か、当然、アロダント第二王子みたいな王族とも繋がりがあるやもしれん。
うーん、モー商会は手広くやっているみたいだし、別にアロダント第二王子との繋がりがあったとしても不思議ではないか。
ちょっと気になったので、積み荷の蓋を少し開け、中を検める。すると………。
(あちゃあ~~、やっぱり問題があるじゃねえか。あいたぁ~、まずいじゃんこれ、これはアレだな、所謂一つのアレだよな。)
積み荷の中は、剣や槍、斧といった武器が沢山入っていた。
戦慄が頭を
「ハア~~、………
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