第51話 レベルアップならず、しかしお茶は渋かった
闇の崇拝者との接触をしたジャズは、その戦いの中で自身の無力さを思い知り、更なるレベルアップを望むものの、中々思う様にいかず、出来る事を少しずつやっていく事にしたようです。そんな中で、久しぶりに訪れた憩いの時間。お茶を嗜み、まったりと過ごすジャズは、仲間たちとの会話をしてこの国の情勢を知る事になるのでした。さて、ジャズは何を思うのでしょうか。
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翌日、食堂にて朝飯を食べる。
パンに野菜スープ、わかめなどの海藻サラダ、ハムエッグを食す。うむ、旨い。
今日のご飯も美味かった、軍隊飯は中々侮れない、栄養バランスがしっかりと取れている。
コックさんに感謝しつつ、両手を合わせてご馳走様をする。
「ふう~、食った、今日は待機任務だったよな。このままここでお茶でもしようかな。」
食べ終わった食器をカウンターのところへ持っていき、洗い場へ置く。
「ご馳走様でした」と言い、そのままコップを持ってやかんのお茶をコップに汲み、元の席へ戻り、お茶を啜りながら、まったりと寛ぎながら過ごす。
「はぁ~~、このまったりとした時間が堪らない。お茶もうまいし、今日はゆっくり過ごすか。」
一応ユニークスキルのメニューコマンドを表示させた、何か出来る事はないかと、ステータスをチェックする。
(やっぱりな、レベルアップコマンドが暗く表示されている。)
残念、今回はレベルアップに必要な経験点が足らないようだ。
折角シナリオをクリアしても、貰える経験点が750点では次のレベルに必要な経験点が溜らない様だ。
まあしかし、スキルポイントは増えた筈だ、何か有用なスキルを習得するだけでもいいよな。
スキルポイントは7ポイントまで溜っている。
先の戦いでは相手の魔法使いに手も足も出なかったから、いい機会だ。
対魔法使い戦を想定して、何らかの属性耐性のスキルを取るのも悪くはない。
今後の事は解らないが、これからの事を考えていこう。
しかし、属性耐性といっても色々ある。
火耐性に水耐性などの火、水、土、風、の四属性に対するものから、光、闇、聖、などの属性もある。
初級スキルならば各耐性に特化したスキルがあるが、敵がどの属性攻撃魔法を使ってくるのか、事前情報があればいいのだが、基本そういった情報は掴み切れないところがある。
(初級スキルよりも、いっその事上級スキルを習得した方がいいような気がするな。)
上級スキルの中には「全属性耐性」というのがある。
これは文字通り全ての属性に対する耐性が付くという事だ。
寧ろこっちの方が必要となるスキルポイントは少なくて済む。
ただ、この全属性耐性というスキルは消費ポイントが5ポイントと高い。
上限のスキルレベルをレベル5まで上げるとなると、75ポイント必要になってくる。
これは正直、大変である。
(だけど上級スキルだけあって、その効果は大きいんだよな。)
全属性耐性のスキルレベルが1でも、属性攻撃に対して20%のダメージカットが発生する。
勿論パッシブスキルだ、常に発動しているスキルなので、一々手間は掛からない。
うーむ、初級スキルにするか、上級スキルにするか、悩みどころだな。
だが、相手がどの魔法を使ってくるか解らない以上、ここは万全を期して上級スキルを習得しておくか。
うむ、そうしよう。
俺はメニューコマンド内にある「スキル」のコマンドを決定する。
おー、出てきた出てきた、色々なスキルが習得できる様になっているみたいだ。
しかし、俺の必要としているスキルは「全属性耐性」だ。
色んなスキルを目にすると目移りしてしまうが、ここは我慢の子だ。
早速「全属性耐性」のスキルを、5ポイント消費して習得する。
(よしよし、「全属性耐性」を習得したぞ。まだスキルレベル1だが、これが有ると無いとでは大違いだからな。今後の対魔法使い戦では期待できるスキルになる筈だ。)
今回はこんなもんかな、残りのスキルポイントはこれからの事を考えて取っておこう。
今一度ステータスを表示する。
ジャズ LV7 HP21
職業 忍者
クラス 下忍
筋力 31 体力 26 敏捷 32
器用 27 魔力 10 幸運 25
ユニークスキル
・メニューコマンド
・精神コマンド 4/4 (必中 不屈 熱血)
スキル
・ストレングスLV5 (フルパワーコンタクト使用可)
・タフネスLV4
・スピードLV2
・投擲
・剣術LV3
・身体能力極強化
・全属性耐性LV1
経験点750点 ショップポイント1230 スキルポイント2
武器熟練度
小剣 70 剣 70 槍 35
こんな感じだな。まあ今回はレベルアップは出来なかったが、そんな時もあるわな。
だが今回は有用なスキルを習得したという事で、良しとしとくか。
まだまだこれからって感じだな、俺のステータスも。
お茶を啜り、まったりと時間を過ごす。お茶がうまい。
これ何茶だろうか? ほうじ茶? それとも玄米茶? 緑茶かもな。
まあうまいからいいや。こうしてまったりとしていると、ニールとリップがやって来た。
二人共手にお茶を持っている。
「ようジャズ、一緒にお茶しようぜ。」
「ああ、いいぜ。」
「私達、今回は待機任務だから、この基地から外へ出ない様にって事よね。駄弁りながらお茶しましょう。」
ニールもリップも俺の座っているテーブルの席に着き、お茶を飲みだした。
「なあリップ、先日の任務で第二王女のサナリー様からちらっとだけ聞いたんだけどさ、この国には第一王子と第二王子がいるんだよな?」
「ええ、第一王子ダイサーク様と第二王子アロダント様でしょ。それがどうかしたの?」
「二人ってさ、仲悪いの?」
俺の質問に、二人は顔を見合わせ、話が広がる事を予想したのか、にんまりとした表情になり、話に花が咲いた。
「いいかジャズ、第一王子ダイサーク様はな、お忍びでよくスラム街に出かけて、安酒を飲みながらスラムの人達と騒いでいるらしいぞ。」
「へえ~、そうなのか?」
「ええ、そうよ、そんなだから国民に人気があってね、次期国王はダイサーク様で決まりだろうってもっぱらの噂よ。」
「へえ~、国民に人気があるのは結構な事だよな、この国も安泰か。」
「ところがそう上手くいかないのが国ってもんだろ、なんせ第二王子アロダント様が玉座の椅子を狙ってあれこれ動いているらしいんだよ。そんなだからダイサーク様と仲が悪くてさ。」
「え? だって、アロダント様って王位継承権第二位だろ。ダイサーク様がいる以上、好きに出来ないと思うがな。」
「アロダント様ってね、国民には人気が無いけど、貴族には人気があるのよ。ほら、ダイサーク様はどちらかっていうと、庶民寄りなところがあるじゃない。だけどアロダント様は気位が高いから、貴族達にちやほやされて育ってきたから、自分の娘を嫁にしようと画策している貴族ばかりらしいわよ。」
「ふーん、王族ってのも大変なんだな。」
「だけど、アロダント様ってあまりいい噂を聞かないのよね、性格が残忍で冷酷らしいから、使用人を事ある毎によく鞭打ちしてるらしいわよ。」
ふーむ、話を聞くと第二王子アロダントってのは、中々性格が歪んでいるらしいな。
サナリー様も、信用が置けないって言っていたな。
「おいおい、リップ、詳しいな、どこでそんな情報を仕入れてくるんだ?」
ニールが聞くと、リップはどや顔で語り始めた。
「私ってほら、ナナ少尉の部下じゃない。ナナ少尉の最初の自己紹介覚えてる? ナナ・フローラって名乗ったでしょ。私とナナ少尉で色々話していると、色んな情報が聞けるのよ。ナナ少尉はフローラ子爵家のご令嬢らしいから。」
「え!? そうなの? 知らんかった。知ってたか? ジャズ。」
「ああ、そういやあフローラって家の名前を名乗っていたな。そうか、子爵家のご令嬢だったのか。」
「そ、だから私は色々な王都なんかの情報が入って来るって訳。」
ふーむ、ダイサーク様にアロダント様か、第一王子と第二王子との不仲は今後どのような展開になる事やらだな。
「そういやあさあ、第一王子と第二王子、それと第二王女の事は解ったけどさ、第一王女の話って聞かないよな、どうなってるの?」
俺が聞くと、二人は言いよどみながらも答えてくれた。
「………なあ、ジャズ、この国にとって、いや、この国の国民にとって第一王女カタリナ様の話は、禁句だ。解ったな。」
「え? 何で?」
「ジャズ、カタリナ様はね、お隣の国に嫁ぎにいって、子供を産んで、その後すぐ、この国に出戻って来たのよ。」
「え!? 出戻り! そんな事して隣国との関係は悪くならないのかよ?」
「ジャズ、知らないの? この国の人は皆知っているわよ。有名な話だもの、末端の村にまで噂が行き届いているわよ、それにね。」
「何だよ、まだ何かあるのかよ。」
「………カタリナ様はね、結婚する前に、一人の市井の男との間に出来た子を産んだらしいのよ。それが隣国の王子に知られて、大喧嘩、王子との間に出来た子供を連れてこの国に出戻ってきたって訳、流石に当時は肩身の狭い思いをしたらしくてね。王城を出て、田舎の村に子供と一緒に住んでいるらしいわよ。」
「な、なんと、そんな事があったのか。複雑なご家庭なんだな。確かにそれは禁句だな。場合によっちゃ隣国と戦争してたかもしれないからな。寛大な国に嫁いで良かったと言うべきか。」
ふーむ、アリシア王国の王族か、色んな人生模様があるみたいだな。
第一王子ダイサーク様に第二王子アロダント様、それに第一王女のカタリナ様、あ、カタリナ様は嫁いだ時点で王位継承権は無いか。
そして第二王女サナリー様。サナリー様も王位を放棄したんだよな。
色々あるもんだな、人生ってやつは。
このお茶の様に渋い。だがその渋みがいい。
そう感じるくらいには俺は年を取っているからな、まあ、ジャズがこの先、どうなっていくのかは、俺にもわからん。
まあ、なるようになっていくだろう。運命って奴は………。俺は只の雑魚キャラだしな。
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