当たり付き棒アイスの話。

「うぉぉ!」

「なっ…んだよ急に」


頭上で聞こえた大声に驚いた谷町がソファーに座る塩塚の方を向いた。

大声を上げた張本人である塩塚は手にアイスの棒を持っている。


「当たった」

「は?」

「アイスが当たったんだよ!」

「…あっそ」

「反応薄っ!」


興奮気味の塩塚を尻目に谷町は手に持ったままだった漫画をまた読み始める。

恋人の反応の薄さに頬を膨らましつつ、塩塚はアイスの棒をマジマジと見つめてから数秒後、ソファーから立ち上がって外に出る準備をし始めた。


「なんだよ、もう遅いぞ」

「アイス交換してくるんだよ」

「…子供かよ」

「谷町も行く?」

「はぁ!?」


唐突な誘いに明らかに不満そうな返事をした谷町だったが、忙しかったせいでデートどころか一緒に出歩いてもいなかったことを思い出して、読んでいた漫画を閉じて立ち上がった。


「わかったよ」

「やった!」

「あとついでに柔軟剤も買うぞ。詰め替えもうなくなってたから」

「はーい!…ついでに酒買わない?」

「…少しだけな」


谷町が財布とスマホをポケットに仕舞い、塩塚の方を見ると恋人の嬉しそうな顔が見える。それにつられて谷町も頬を緩めたのだった。



(暗転)

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