番外 夜食と余りもの
深夜一時。
「…っつあー疲れた」
原稿の直しをようやく終えて背伸びをするとバキバキと体の骨が音をたてた。興奮冷めやらぬうちに書いたせいとはいえ、内容の錯綜だけでなく誤字脱字も多いとは。無理が出来なくなってきたのもあるが単純に編集を生業としていた者として担当者には申し訳なかったと反省…したところで急激に眠気と空腹が襲ってきた。
「眠い…が、腹が減った」
閉じようとする瞼に従おうともしたが腹の虫が煩くて寝れそうにないことを悟ってとりあえず台所に向かう。
「んーまぁ互いに給料日前だしな」
台所の電気をつけて開いた冷蔵庫の中には玉ねぎと食べかけのそぼろと卵が数個。奥の方にある皿を引き寄せるとから揚げ…か。
「調味料は一通りあるし…めんどくさいけど作るか」
どうせなら明日後輩兼同居人も食べられるようにしよう。冷蔵庫の残り組と適当に必要そうな調味料とまな板、包丁を用意する。そして玉ねぎとから揚げを一口大の大きさに切るだけ…なんだけどやっぱり玉ねぎは目に染みるもので。疲れ目にはなおのこと。溢れ出るただの生理現象に耐えつつ今度はフライパンを取り出した。
炒めた方が…いやめんどくさいからいいか。
材料と調味料と水を適当にフライパンに流し込んで火をつける。チチっと甲高い音を響かせて辺り一帯が少しだけあたたかくなった気がした。
「まぁ…時間かかるよな」
ポケットに忍ばせていた携帯を確認するとまだ流石に30分は経っていない。この時間でやっているテレビは…と考えたが今更居間に行ってテレビを見るほど頭が冴えているわけでもないので諦めた。
「ん…そろそろいいか」
いつの間にかうとうとしてしまっていたみたいでとっくの昔に湧いていただしのぷつぷつとした悲鳴に意識を覚醒させる。
いい感じの匂いも漂ってきているしもうそろそろ仕上げするか。
卵を取り出して余ってる分を割り入れて素早くかき混ぜる。本当はボウルとか使うべきなんだろうけど、まぁいいだろ別にお店で出すわけじゃないんだし。
「そういえばご飯あったっけ」
今更な疑問に少し慌てて炊飯器を見るとちょうどひとり分くらい残っていた。おそらく俺が食べていない分だろう。用意していた茶碗に残りをよそって保温スイッチを切る。熱い釜でやけどしないように長袖を伸ばして急いでシンクに移して水を入れる。食べてる間だけでもつけていれば洗いやすくはなるだろう。
「食べ終わったら炊いとくか」
白身が完全に白くなる前にお玉を取り出してご飯の上に乗せると食欲をそそる見た目に思わずため息がもれた。座って食べたいしさっさと部屋に戻るか。
そして自室に戻った後、箸を忘れたことに気が付いて戻ってくるのは椅子に座っていただきますを言い終わった頃のことだった…。
(暗転)
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