番外 兵器とフィクション ※少し残酷描写注意
「金曜10時に鬼畜過ぎませんかこの描写」
とある休日。基本的に某映画番組を見ることが日課になっている俺らは今日も今日とて金曜9時からポップコーンと酒を待機させてテレビ前に鎮座していた。
今日の映画は不朽の名作として知られるゾンビゲームの実写映画化モノ。ゲームはプレイしたことあったが実は映画の方には手を出せていなかったのでちょうどよかったとのんびりとした気持ちで見始めたのはいいのだが。
「思ったより過激ですねこれ」
「…うん」
前かがみにならざるを得ないセクシーシーンやポップコーンに伸びていた手が思わず止まるほどの残酷描写の応酬に少しだけ顔が引きつる。規制ラッシュの昨今で明らかに子供の目を引くであろうこのタイトルをこの時間に放映するのはなかなかなチャレンジだなぁと何となく思った。まぁ、よい子は眠ってる時間だから見る方が悪いと俺は思ってるからこれは決して悪い意味ではないことだけは付け加えておこう。
「うっわぁ…」
そして話は最初に戻る。
目に飛び込んだのはみんなのトラウマシーンと呼び声の高いレーザー光線による惨殺シーン。噂には聞いていたが映像として現れると作り物とはいえ妙な生々しさに思わず首に手を当ててしまった。レーザーが通った描写と通った個所から血が滴る描写だけで何であんなに怖く感じるんだろうな。肉塊になって部位が落ちる描写もないのに。やっぱりあまり傷がつくはずない体や顔の中心部に亀裂が入るだけで人間は「あ、こいつ死んだな」と思えるんだろうか。それこそ某超能力系刑事ドラマの切り取り線野郎よろしく。文章に起こしたりもはやイラストにするとそこまでもない細切れ先輩もやっぱり映像になると気持ちが少し悪さを感じてしまうのはそういう刷り込みのせいか。これが大画面じゃなくて本当に良かったとホッとする。
「やばいですよねぇ…そういえばこれCGじゃないらしいですよ…?」
ふと思い出した裏話を宮さんにも伝えようと視線を後ろにずらした時だった。
「あれ?」
先ほどまで俺が背中を預けていたソファーの上で俺と一緒に映画を見ていたはずの宮さんの姿がなくなっていた。
「みやさーん?」
立ち上がって確認するもどうやらこの居間の中にはいないようだ。はて、いったいどこに行ったのか…そう考えていた時、宮さんは自身の作業部屋からひょっこり顔を出した。まぁどこかから現れるのが当然ではあるが突然思わぬところからの出現に心臓がびくっとなる。
「あ…終わった?」
「何がです?」
「その…防御装置のとこ」
「あー終わりましたよ」
そう話すと宮さんは心底ほっとした表情を浮かべて自分の定位置に戻った。今まででCM中のトイレ以外に席を立ったことがない宮さんにしては珍しい…もしかして
「もしかして宮さんグロいの駄目なんですか?」
至極当然の答えだった。彼は顔を引きつらせてからどっとため息をつく。
「まぁ軽いのは平気だけどあれは妙に苦手でね…」
「ふーん…宮さんにも苦手なものとかあるんですね」
「そりゃああるよ、人間なんだから」
ニヤニヤしながら言う俺に宮さんはまたため息を吐いた。おそらくこのことはあまり知られたくなかったんだろう。まぁでも、あのシーンはトラウマに残ってもしょうがない気もするが。
「チャンネル変えます?」
「いや、だってお前見たいんだろ?」
「恋人が怖いって言ってるもんを流し続けるほど俺も最低な人間じゃないんで」
「…さっきまでニヤニヤしてた人間が説得力も何もないんだよな」
「まぁそれは…ご愛敬ってことで」
「意味わかんねぇよ」
やっと引きつった表情が消えてけらっと笑う宮さんに心がほっこりする。残念だがこれはまた今度一人で…いや一人は怖いからこういうの平気な人を探して一緒に見よう。そう思いながら俺はリモコンに手を伸ばしてチャンネルを回したのだった。
(暗転)
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