番外 深夜のコンビニ。
「あれ、宮田さん?」
とある深夜のコンビニ。バイト終わりに甘いものを求めて立ち寄ったそこには見知った先輩…のさらに先輩がいた。
「えーっと…三雲…琉くんだっけ?」
宮田さんは少しだけ考え込むとおずおずと俺の名前を告げた。俺は前から林さんから散々話を聞いたりしていたので覚えていたが、宮田さんの方は林先輩の家で簡易打ち上げを行った時にちらりと顔を合わせた程度だっただろうに覚えていてくれたんだと少し嬉しくなった。
「はい、すみません急に声かけちゃって」
「いや、いいんだよ」
「こんな時間にどうしたんですか?」
「それは君にも…君はバイト上がりか」
「えっ…」
俺の服装をちらりと見てそう宮田さんは納得したように付け加える。そこまで疲れた雰囲気になっていただろうか。そう思って今の服装を確認していると宮田さんの申し訳なさそうな声。
「あーいや、君のことは林から聞いていてさ…そんなくたびれたように見えたからとかではないよ」
「そうだったんですか…俺も宮田さんのことは先輩から伺ってて」
「あーなるほどね」
深夜の数あるコンビニの中で一人の共通の男を持った二人が揃うのもなかなか珍しいものだと思った。これははたまた世間が狭いせいか、それとも林先輩の交友関係が広いのか。
「あ、それ」
ふと宮田さんが持っていた小さめのかごの中にある商品が目に入った。それは最近俺が気に入っているシュークリームで、中にはカスタードクリームとホイップクリームが入っている甘さが売りの商品。甘すぎると不評だったバイト先の人は確か宮田さんと同じくらいの年代じゃなかっただろうか。そこまで考えていると目の前の彼はフッと微笑む。
「これ、結構甘いよね」
「あっ…はい」
「僕、見かけによらず結構甘党でさ」
「はぁ…」
「まぁ林からどう聞いてるかは分からないけど」
そこまで言うと彼は目の前にある棚からシュークリームの隣にあったティラミスを手に取った。
「林はこっちの方が好きなんだよね…見た目のイメージ逆でしょ?」
「えーっと…」
「あ、ごめんね」
まさかこんなに話してくれるとは思わずに言葉が少なくなってしまった俺を気遣って宮田さんが謝る。
「いや…先輩から宮田さんは寡黙な人と伺ってたので…」
「あぁー」と言いながら彼は少しだけ天を仰ぐ。
「一応今もそうなんだけどね…もしかしたら原稿とにらめっこしてて人と話してない状態で知り合い…の知り合いさんと会えて饒舌になったのかもしれないなぁ」
そしてそう言うと彼は困ったように笑う。その笑い方は林先輩と少し似ていて、これは先輩が惚れるわけだと一人心の中で微笑ましくなった。
(暗転)
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