番外 金平糖
「…なんだこれ」
アルバイトの帰り。買ったばかりの弁当をテーブルに置いた俺はポツンと机の上に置いてあった瓶を見つけた。中にはカラフルな粒がたくさん入っている。えっと見たことあるけどこれは…。
「金平糖」
「あ!そうそう金平糖…あ、ただいま」
疑問を解決してくれた声に振り返ると宮さんがいた。スキンヘッドの頭からはわずかに湯気が上がってるのが見える。今までお風呂に入っていたんだろう。
「おかえり」
「で、この金平糖どうしたんですか?」
「あぁ…えっと」
俺の言葉に何かを思い出すように宮さんは少し上を見上げる。数秒してから「そうだ、もらったんだ」と指を鳴らして答えた。
「もらった?」
「そ、打ち合わせでね」
金平糖の瓶を手に取る。掌に収まるほどの小さな小瓶。くるくると回すと裏側の方に可愛らしいロゴが描いてあるシールを発見。どこか有名なメーカーなんだろうがあまりピンとこなかった。口にはコルクがはめられていて中には星のかけらのような形をしたカラフルな金平糖が詰まっている。多分虹の色と同じくらいの色数なんじゃないか?傾けるとからからと金平糖が動く音がする。
「少し食べた?」
「ん…美味しかった」
その言葉に味が少し気になってコルクに手を伸ばす。一度開封されたからか容易に抜けて砂糖特有の甘い香りが僅かに鼻をくすぐった。一粒取り出そうと瓶を傾けるとコロコロと中身が転がって一粒余分にこぼれてしまう。口の中に放り込むとやさしい甘さが広がった。
「美味しいだろ?」
「うーん…まぁ」
コロコロ転がすと甘めの角が口の中を刺激する。じわじわと甘さが広がっていくのはバイト終わりで疲れた体を癒してくれている…気がした。
「これ結構入ってますけどどうするんですか?」
「まぁ賞味期限結構長いから大丈夫だよ」
「そっか」
「料理に入れてもいいかもね」
そう言って俺の手から金平糖の瓶を取って自分も一粒口の中に放り込む。その手際の良さによほど金平糖が気に入ったのだなと自分の頬が緩まるのを感じた。
「食べ過ぎだけは気を付けてくださいね、それいわば砂糖の塊なんで」
「分かってるって」
(暗転)
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