過去話 夏バテ
「大丈夫か?」
「ん…」
着実に夏に近づいている7月某日。昼寝に行ってから珍しくいつまで経っても居間に顔を出さない後輩を案じて寝室を覗くと、ぐったりとした表情でベッドに横になっていた。
「もう6時なるけど」
「あーもうそんな時間なんですか…」
「夕飯どうする?なんか食べられそうか?」
「んー」
ぐったりとした声を上げて起き上がったものの、頭をフルフルと振ってその場を動こうとしない。寝起きとはいえ明らかに体調が悪そうだ。
「水分取ったか?」
「んー」
「その様子だと取ってないな…?」
少し呆れ気味な声でそういってもぼんやりとした返事しか返ってこない。視線も僅かにふわついている。この状態になっているのを見るのは二回目だ。確か一回目は…。
「っ!」
思い出して顔が暑くなった。随分と前のことを思い出して赤くなってしまうなんてまだまだ自分も若いのかもしれない。
「とりあえずなんか飲み物買ってくるから大丈夫そうだったら居間に戻ってて」
「え…水でいいですよ」
「その状態だったら経口補水液とかの方がいいだろ」
「えーあれ不味いじゃないですか…」
「不味いって思えるうちは健康なんだよ」
少しだけいつもの生意気さが戻ってきたのを確認して安堵する。
「とりあえず色々買ってくるから」
「お金は…」
「そんなこと気にすんな」
変に律儀な後輩にそう声をかけて、俺は寝室のドアをパタリと閉めた。
(暗転)
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