(16)静止衛星軌道エレベーター


 宇宙エレベーター。

 軌道エレベーター。

 まぁ色々言われてはいるが、大雑把に言うと、宇宙にロケットではなくエレベーターで行こう、という施設である。


 日本のSFでは小説でもアニメでもあまり登場しないが、けっこう目立つ描かれ方をしていたのは「機動戦士ガンダム00(2007年)」だったかな。

 宇宙空間で無尽蔵に太陽光発電を行い、その恩恵は軌道エレベーターのケーブルでつながった地域のみで、貧富の差などで戦争が、という話しだったと思う(←見てない)

 現実に起こりそうです。ミノフスキー粒子が実現するかは知らんが。


 というコトで、今回は98%で妄想の話です。


 居直りはともかく。

 残り2%の事実は、アメリカNASAに宇宙エレベーター計画があり(目標期限は過ぎてたような?)、日本でも大林組中心に2050年実現へ向けて計画している。

 大林組のネックは、エレベーターのケーブル素材がまだ未開発で、動力(発電?)の確保、そして地上基地が日本(北緯が36度くらい)とすると衛星軌道へのアクセスが面倒だということ(できなくはないが)。

 何より大切なのは資金繰り、とも思うが。


 衛星軌道で安定するのは赤道上であり、ガンダム00のように地球をグルリ巡るリング状の施設、というのがあれば緯度がずれてもアクセスができる。

 つまり、最初の衛星軌道基地(エレベーター)を造るなら赤道上、出来れば等間隔で地上基地を作るのが理想で、赤道上にそうそう都合のいい陸地や島は希少。

 で、思ったのが海上都市。宇宙エレベーターのケーブルは必ずしも地上へ連結させておかなくても、稼働に必要な張りと強度が保てればいい。

 地上基地の基礎、それに周辺の港や空港、ホテルや従業員の居住空間など、海上都市ならば自由自在に人工島を増殖できる。

 赤道上を想定しているならば、海上都市は清水建設株式会社の「環境アイランド GreenFloat」とか。


 妄想は広がりまくりですけれど。


 先程も書いてますが、問題点としてはケーブルの素材でしょうかね。

 宇宙と地表を繋ぐのですから半端な強度ではできない。

 いま注目されているのはカーボンナノチューブ(CNT)と蜘蛛の糸。

 カーボンナノチューブはぜひともググって欲しい(←手抜き)が、特性は多々あるのだが、ケーブルとしての欠点は「長く」加工できない。せいぜい伸ばせて数センチ。静止衛星軌道まで3万6000kmの彼方で、話しにならない。


 次の注目株は「蜘蛛の糸」で、これを完全再現できればノーベル賞級と言われている。事実としてSpiber株式会社が蜘蛛の糸生成の遺伝子の一部を微生物に合成し、たんぱく質のを生成させて「QMONOS」という商品を作り出した。これはシルクと同じようにたんぱく質の糸であり、それなりの設備は必要とするがローコストで計画的に糸を生成できる。

 どう使うのかは謎だが「既存のさまざまな化学製品と置き換えることができる」とのことで、産業分野では自動車や飛行機などの輸送機器や電子機器に使われるそう。あとシルクと同じように医療分野などで手術用の縫合糸や人工血管などにも。

 蚕の遺伝子にクラゲの蛍光遺伝子を組み込んで蓄光する生糸を作る技術があるので、QMONOSでも同じことが出来そうな気がする。

 塩野義製薬が飲むコロナワクチン薬を蚕から作っているそうで、同じコトがQMONOSでも出来ればさらに面白そうなのだが。

 まぁ原理を知らんが(←無責任)


 蜘蛛の糸を生成する部分の完全解析、というのは難しい。

 遺伝子を解析する時、長い長い遺伝子コードを一気に解析! というのが現代技術ではできないそうで、ある程度の細切れにし、前後の順列に合いそうな欠片を組み合わせる、という不規則なジグソーパズルをしているそう。

 蜘蛛の遺伝子コードの読み取りを困難にしているのは、蜘蛛の遺伝子は同じ文字列の繰り返しが延々と続き、所々が1文字だけ違う、という面倒な塩基配列をしている。

 ミルクパズルの5千ピースで数ヶ所だけに点のような色がついているジグソーを正しく組み立てろ、と言われているようなもの。

 遺伝子情報をもっと長く読み取れるようになる技術は、まぁ十年もせずに開発されるでしょうが、何処の国が最初になるのやら、楽しみです。


 なんで宇宙エレベーターが欲しいのか。

 まずロケットを打ち上げるよりローコストで、環境に影響も少なく、また外惑星(火星より外側)へ行くのが安易になり、内惑星(金星・水星・太陽)へ行くにも面倒な軌道計算はあるにせよ安易になる。

 太陽光発電も宇宙空間ならば大気や気象の影響を受けず、地球を囲むリングであれば何処かで必ず24時間発電している。

 無重力空間でしか合成できない物質も多く、産業や医療の大幅な発展が期待できる。

 衛星の代行や、ロケットによる事故や廃棄物を減らせるので、スペースデブリ問題も減少する。


 で、個人的最大の目標は。


 核廃棄物を太陽に捨てたい。


 ……非人道的なコト言っている自覚はある。

 ロケットで廃棄物を輸送しようとすると、爆発事故の場合、核汚染が広範囲に撒き散らされる。ので現状では核廃棄物を宇宙(太陽)へ投棄する、という手段は使えない。

 では地上でとなると、日本の場合、4枚もの大陸プレートがひしめく地震大国島国で、半減期が3千年なんて危険物を「安全に」捨てておける場所なんかない。

 だいたい日本人、3千年も物覚えはヨロシクない。事実3千年前の縄文時代を正確に、口伝でも正確に残っている記録があるのか?

 あるわきゃない。

 発掘される遺跡や土器などから推察するしかできない。

 3千年後、日本と呼ばれた島国がまだ存在したとして、どうやって伝える?

 ソコのアレはまだ見つけた3千年後も危険なのだよ、と。


 もうちょっと現実的な話になると、原子力発電所とか、核廃棄物とか、某国を見るように緊急事態下(たとえば戦争など)では戦略目標にされる。

 いつまでもノンビリ抱えていていいモノではない。


 だからとっとと宇宙へ、太陽へ捨て去りたい。


 これが動機で宇宙エレベーター欲しがるヤツって、千早丸だけだろうなぁ




株式会社 大林組

https://www.obayashi.co.jp/


大林組 季刊大林 宇宙エレベーター建設構想

https://www.obayashi.co.jp/kikan_obayashi/detail/kikan_53_idea.html


Spiber株式会社

https://spiber.inc/


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